中国映画「薬の神じゃない!」がヒット 現実の政治動かす
映画のストーリーもおおむねこの通りで、シュー・ジェン演じる怪しげなインド雑貨店を営む主人公が、患者グループからインド製の安価な薬を求められる展開。最初はひと儲けしてやろうと思っていた男が、理不尽な医療制度に苦しむ患者たちの壮絶な闘病を目の当たりにし、やがて利益度外視でハイリスクな大量密輸に手を染めてゆく姿が涙を誘う。
■持たざる者たちの連帯の物語
「持たざる者たちの連帯の物語がこれほど大衆に愛された背景に、強者の理論たるグローバリズムへの反発があるのは間違いないでしょう。欧米メーカーの強気な薬価に対抗すべく、高い関税をかけていた中国政府でさえも、それが国内薬価の高止まりを招き、患者を救えぬジレンマに悩まされていました。しかし李克強首相は、本作のヒットと世論の高まりを受け、それに“便乗”する形で、ついに抗がん剤の関税ゼロを打ち出すなど薬価下げ政策に踏み切りました。おかげで、中国のがん患者の生存率は2倍以上に改善されたということです」(前田氏)
映画の影響力が、現実の政治を動かしたのは中国ではほとんど過去に例がないという。いまだに厳しい脚本検閲制度が残る中、それをかいくぐった社会派ドラマのレアな成功例。さて、日本では……。