中国映画「薬の神じゃない!」がヒット 現実の政治動かす
近年日本では「君の名は。」(2016年)の歴史的大ヒットが記憶に残るが、なんとその2倍となる興収500億円ものメガヒットを記録した中国映画「薬の神じゃない!」が全国で好評上映中だ。北米市場に追いつく勢いだった18年の中国映画市場で夏シーズンに公開。無名の新人ウェン・ムーイエが監督するも、公開3日間で約146億円を稼ぎだしたことで話題となり、社会現象的ブームを巻き起こした。映画批評家の前田有一氏が解説する。
「中国では珍しい社会派実話映画で、14年に起きたインド製の薬の密輸事件、通称『陸勇事件』を基にしています。しかし作風はコミカルで、小難しい点はなし。立場の弱い庶民同士が助け合う、日本を含むアジア人好みの泣ける人情ものです。気取らない登場人物たちの奮闘を描きつつ、社会制度の矛盾を暴き出す手際の良さは新人監督とは思えぬ腕前でした」
陸勇事件とは、陸勇という男が中国内では高すぎる白血病特効薬の海外ジェネリックをひそかに輸入し、お金のない患者たちに安価で提供していたというものだ。違法行為とはいえ、その行動は中国内で大きな反響を呼び、共感を集めた。