ジャルジャル福徳が作家デビュー“胸キュン”筆致の実力は?
主人公の小西徹は、関大に通う2年生。しかし大学にいまだ馴染めず、友達は方言を隠そうとして変な大阪弁を使う山根という男と、深夜の銭湯掃除のバイト仲間のさっちゃんしかいない。人目を避けるため学内では日傘をさして、楽しそうな学生グループを妬む日々。そんな“イタい奴”小西が、ある日恋に落ちる。相手は、授業が終われば教室を一番に出て行き、学食で一人、ざるそばをすする逞しい女の子・桜田さん。小西は彼女に運命を感じ、何とか話しかけることに成功。初デートにも行くのだが、次の約束に彼女は現れなかった。その理由とは――。物語は思いがけない方向に加速していく。
「ジャルジャル」のコントにも通じる、愛嬌のあるキャラクター作りはさすが。承認欲求と自意識の塊のような小西は、恋に関しても思い込みで突っ走る。女子の気持ちはそっちのけで、自分が傷つくことばかりに敏感なので辟易する部分もあるのだが、おばあちゃん子で根はいい奴という設定が効いており、なんだかんだ応援してしまう。親友の山根も、デートをすっぽかされてやけっぱちになった小西に八つ当たりされても彼を守ろうとする「正しい熱さ」の持ち主だ。ベージュのロンTにベージュの長ズボンを合わせるような最悪のファッションセンスというのも、いい味を出している。また、高校時代の軟式野球部の思い出など、じわっとクスッと笑えるエピソードも巧みだ。