自分と同じ寂しさは…最後の弟子が真打ちになるまで元気に
その時の一花の気持ちはわかる。近年、女流落語家が増えたとはいえ、女性が落語家になるのは難関なのだ。
「見込んだ通り、一花はよくやってます。前座の頃は気働きができると評判がよかったですし、二つ目になってからも勉強してるみたいです」
一番弟子は一朝の師匠、柳朝の名跡を襲名し、二番弟子の一之輔はすっかり売れっ子になり師匠孝行をしている。その下の連中も一様に勉強熱心で、個性がある。
「師匠と先輩方たちに恵まれたことは確かですが、まあ、弟子にも恵まれたと言ってもいいでしょうね」
いみじくも弟弟子の小朝が言った。
「兄さんは苦労してきたから、出来の良い弟子たちは神様からのプレゼントなんです」と。
芸の神様はちゃんと見ているのだ。 =つづく
(聞き手・吉川潮)
▽しゅんぷうてい・いっちょう 本名・浮ケ谷克美(うきがや・かつみ)。1950年、東京・足立区生まれ。68年、5代目春風亭柳朝に入門。73年、二つ目昇進、「一朝」と改名。82年、真打ち昇進。84年、国立演芸場花形演芸新人大賞受賞。86年、「若手花形落語会」で文化庁芸術祭優秀賞受賞。2013年、第30回浅草芸能大賞奨励賞受賞。20年、第70回芸術選奨文部科学大臣賞(大衆芸能部門)受賞。落語協会所属。2月2日18時半から人形町の社会教育会館で独演会。2月14日、お江戸日本橋亭で「春風亭一朝を聴く会」開催。