夕ぐれ族、一杯のかけそば…メディアに持ち上げられた後
涙なくして聞けない話を新聞・テレビ・週刊誌が報じ、映画化(母親役は泉ピン子)までされた。国会では時の首相・竹下登に質疑する議員がこの話を朗読したこともあった。
作者は栗良平。語り部として全国を回るうちに、その話を本にしたものだった。素朴で純朴そうな中年だった。
「読む人誰もが涙する幻の童話」として全文を朗読する番組まであった。間もなく、「この話は創作では」という疑惑が持ち上がった。
疑惑の先陣を切ったのはタモリだった。「笑っていいとも!」で“150円のかけそばを3人で食べるなら、インスタント(ラーメン)は3個買えたはず”と素朴な疑問をぶつけ、「涙のファシズム」とうさんくささを指摘した。
世間も「確かにおかしい」と同調。疑念を抱き始めると、著者の詐欺まがいの言動を告発する人が現れ万事休す。経歴詐称など次々と嘘が露呈。栗氏は印税など1億円余りを得て、表舞台から去った。