せっかく緒形拳さんと1対1で会えたのに…俺の後悔、聞いてください!
「砂の器」「復讐するは我にあり」「楢山節考」などなど数多くの映画やドラマで主演を務め、俳優としていくつもの賞に輝いた緒形拳さんから楽屋に来ないかと声をかけられたのは、テレビ東京の天王洲スタジオで女流作家、佐藤愛子さんの自伝的大作「血脈」(2003年放送)を撮影していた空き時間のことであった。
楽屋にドッシリとあぐらをかいた緒形さんの周囲にはマネジャーも付き人もいなくて……つまり俺と1対1……、もうその状況に一瞬にしてのみ込まれてしまった俺……。
そして、緒形さんの前にはなぜかわらび餅が置かれ、「これうまいんだよ! 食おうよ!」「は、はい………」、沈黙の中、わらび餅を口に運ぶ緒形さんと俺……「何か? 何かしゃべらなきゃ(汗)」と心の中で思っても焦るばかりで言葉が頭の中で空回りして声にならない……そりゃそーでしょう! 確かに俺もおバカだけど、日本を代表する大俳優の緒形拳を目の前にしてペラペラ話しかけるようなナイーブのかけらもない人間だったら、多分お笑いやってないと思うもの!!(というのがその後、自分を納得させる自己弁護なのですが……やっぱりそれじゃダメなんだよなあ!!)