五木ひろしの光と影<24>「平尾センセ、『姫』の山口洋子さんってどんな人だった?」
73年の五木ひろしは3月にリリースした「霧の出船」が思うように伸びず、7月に満を持して新曲「ふるさと」(作詞・山口洋子/作曲・平尾昌晃)をリリース。2007年のNHK連続テレビ小説「ちりとてちん」で貫地谷しほり演じるヒロインの母(和久井映見)の愛唱歌という設定で何度も流れた。また、香西かおりもこの曲をカバーしている。
評判は上々でヒットチャートはじわじわ上がっていった。有線でも上位を走った。しかし、所属事務所の社長である野口修は不満だった。
「いい曲なんだけど、なんかこう、世間を巻き込むパワーがなかった」
作曲を手掛けた平尾の見方は、作り手ならではのものである。
「『ふるさと』は僕にとって自信作。洋子ちゃんの詞の並びもよくて、五木君は最高にうまい……。うますぎたかもね。それがこの曲を名曲にはしたけど、いわゆる大ヒット曲にはしなかった一番の理由かもしれない」
このままいけば、順当に沢田研二の「危険なふたり」が73年度の日本レコード大賞を獲得することになる。野口修、山口洋子ともに、焦りはピークに達していた。(つづく)