松崎しげるさん2001年にモンゴルで落馬事故 「コルセット姿の西やんが面会謝絶の病室に…」

公開日: 更新日:

松崎しげるさん(歌手・72歳)

 歌手・俳優と多彩な活動を続ける松崎しげるさん。褐色の肌でいつも元気なイメージだが、20年前には生死をさまよう大事故を体験。秘蔵写真は親友の西田敏行さんとの病室でのスナップ。自分の人生で一番大きな出来事だったという落馬事故からの入院生活を語る。

 2001年の8月後半にモンゴルで落馬事故を起こして、その2カ月後の写真です。ベッドから立つこともできず、写真のようにつかまって腕の力を借りないと体を起こせない状態でした。

 どうしても歩きたくて看護師さんに止められても自力で歩行器に乗ろうとしたことも。報道では「松崎しげる再起不能」とまで書かれましたねえ。

 事故はモンゴルでのロケの最終日。馬に乗った僕が夕日に向かって草原を走るシーンで、馬が暴走してしまった。乗馬には自信があったけど、モンゴルの馬は世界でもっとも強い馬。突然暴れ出したら手綱を引いてもまったく止まらず、急激に止まった瞬間にパチンコ玉のように体が吹き飛ばされ、2回転くらいして地面に叩き付けられました。

 そこから30分は記憶がない。尾骨から3つある羽のような硬い骨が全部割れて、首も大ケガ。モンゴルの病院に運ばれて手当てしてもらえましたが、日本への直行便がすぐにはなくて。唯一の日本人看護師さんが「ここにいても疫病がうつるから」とホテルに戻るしかなかった。

 僕は背中をまっすぐに固定してピクリとも動けない。帰国までの3日間、申し訳なかったのはホテルでシモの世話をマネジャーにやってもらったこと。尿瓶がないからコーラの大きいサイズのペットボトルの上部を切って尿瓶代わりに。マネジャーにすまない気持ちと自分に情けない気持ちでいっぱいでした。

翌年には松葉杖をつきながらショーを

 日本に戻り、病室のベッドでテレビだけ見る生活。翌月、ニューヨークの同時多発テロが起きて多くの人が亡くなる国際的な大事件になっていくさまを見て、「俺は俺で九死に一生を得たんだな……」とつくづく思わされました。

 関西国際空港から近い病院から東京の病院に移り、部屋が事故を起こした骨折患者が多く、入院している5階で安静にしていました。重傷だし僕もこんな自分を見られたくなかったから「面会謝絶」だったんですよ。

 でも、ある日、西やん(西田敏行)がフラッと僕の部屋に入ってきて。

「松っちゃん、元気?」と。

 僕はビックリしちゃって「ど、どうしたの!?」と尋ねると、「だれにも言ってないんだけど、実は俺、これから頚椎の手術」と。

 偶然、同じ病院だったんですよ。西やんの頚椎は内密だけど、西やんは僕のニュースを見て訪ねてくれた。

「面会謝絶だよ!」と僕が言うと、あの笑顔といつもの調子で「そんなこと言うなよ~」と。西やんとの付き合いは古くて本当に親友。写真にあるように首にコルセットを巻いてる状態なのに、僕の病室まで駆けつけてくれた。ちゃんと歩けるようになるのか、芸能界に復帰できるのかと一番不安な時だったから、すごくうれしかった。友という存在に勇気をもらえたね!

 彼はフロアのナースステーションで僕の部屋を聞いたらしい。彼が帰るとナースが部屋に来るたび「西田敏行さんがいらっしゃいましたね!」と大騒ぎ(笑い)。「やっぱり親友なんですね!」とか。

 自分は手術前なのに2回ほど来てくれて、2人で傷をなめ合ってました、ハハハ。西やんの手術も成功し、僕も退院して少しずつリハビリが進むと、2人でよくベロベロになるまで飲んでたな(笑い)。僕も西やんもすごく忙しい時期での入院だったから、「もっとゆっくり進めよ」と言われてるんだとプラス思考でとらえるようにしました。

 僕は撮影の他にディナーショーをたくさんやっていた頃だから周りにもすごく迷惑をかけた。でも、テレビで小倉智昭さんが「松崎さんは車椅子でも歌う人だから大丈夫、大丈夫」と言ってくれたのを見て、僕はその言葉に勇気をもらい、「俺はそれでもいいんだ!」と翌年には松葉杖をつきながらショーを行いましたよ。

 家族にも迷惑をかけました。結婚して4年後で2人目が生まれたばかりだったから、女房は大変だったし、将来のことも不安だったと思います。

 いまだに後遺症で、拾い物をする時には膝を曲げないとできない。かがんで拾えないんです。ゴルフは打てるけど、ティーアップができない(笑い)。一緒に回る若い人は「やっぱり70すぎのジジイだな」と思ってるんじゃないかな。20年前の事故を知らないからね。

 思い出の写真はたくさんあるけど、人生最大の出来事だった時の西やんとの一枚が秘蔵写真。この写真を見ると「頑張ろう」と気持ちが入るし、西やんのあの時のコミカルな感じを思い出してほほ笑んでしまいます。 (聞き手=松野大介)

▽松崎しげる(まつざき・しげる) 1949年11月、東京都生まれ。70年にソロ歌手としてデビュー。77年に「愛のメモリー」が大ヒット。今年は松崎しげる主催のフェス「黒フェス2021~白黒歌合戦~」で、ももいろクローバーZとの共演が話題に。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    【独自】フジテレビ“セクハラ横行”のヤバイ実態が社内調査で判明…「性的関係迫る」16%

  2. 2

    人事局付に異動して2週間…中居正広問題の“キーマン”フジテレビ元編成幹部A氏は今どこで何を?

  3. 3

    中居正広氏&フジテレビ問題で残された疑問…文春記事に登場する「別の男性タレント」は誰なのか?

  4. 4

    おすぎの次はマツコ? 視聴者からは以前から指摘も…「膝に座らされて」フジ元アナ長谷川豊氏の恨み節

  5. 5

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  1. 6

    萩原健一(6)美人で細身、しかもボイン…いしだあゆみにはショーケンが好む必須条件が揃っていた

  2. 7

    フジテレビに「女優を預けられない」大手プロが出演拒否…中居正広の女性トラブルで“蜜月関係”終わりの動き

  3. 8

    TV復帰がなくなった松本人志 “出演休止中”番組の運命は…終了しそうなのは3つか?

  4. 9

    "日枝案件"木村拓哉主演「教場 劇場版」どうなる? 演者もロケ地も難航中でも"鶴の一声"でGo!

  5. 10

    “年収2億円以下”マツコ・デラックスが大女優の事務所に電撃移籍? 事務所社長の“使い込み疑惑”にショック

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    べた褒めしたベッツが知らない、佐々木朗希"裏の顔”…自己中ぶりにロッテの先輩右腕がブチ切れの過去!

  2. 2

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  3. 3

    巨人今季3度目の同一カード3連敗…次第に強まる二岡ヘッドへの風当たり

  4. 4

    巨人・田中将大“魔改造”は道険しく…他球団スコアラー「明らかに出力不足」「ローテ入りのイメージなし」

  5. 5

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  1. 6

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋

  2. 7

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…

  3. 8

    佐々木朗希を徹底解剖する!掛け値なしの評価は? あまり知られていない私生活は?

  4. 9

    大阪・関西万博の前売り券が売れないのも当然か?「個人情報規約」の放置が異常すぎる

  5. 10

    僕に激昂した闘将・星野監督はトレーナー室のドアを蹴破らんばかりの勢いで入ってきて…