追悼シドニー・ポワチエ 黒人の夢と希望を世界に示した俳優だった
街のシネコン館には、大人が見たい映画なんかまるでない。愛だ正義だのアニメ、幼稚なジャニーズもの、キラキラ系の若い恋愛、軽薄なテレビドラマの焼き直し、邦画はペらっぺらなものばかりだ。今に始まったことじゃないが、邦画は本当にデタラメで幼稚だな。洋画もコミックとCGと殺し合いばかりでウンザリだ。もう「いい加減にしろ」と往年の洋画ファンは嘆いている。ならば、見放題のネット配信でも見とけばいいってか。
ところが、その月決めの電気代だけで見る配信でもロクなものがない。売れ残りのワゴンセールと変わらず逸品は揃っていない。監督ドン・シーゲル、主演ウォルター・マッソー、銀行強盗の顛末記の「突破口!」(74年)なんて見られるはずがない。ハーベイ・カイテル兄貴の「マッド・フィンガーズ」(81年)も見られない。41年前の正月公開らしく最高に狂っている映画だった。ついでだが、ライアン・オニールが強盗犯の逃がし屋になって夜のロスをぶっ飛ばす「ザ・ドライバー」(78年)も見られるわけがない。しょせん、見放題はそんなもんだ。おまけに新作もいまひとつだ。去年のベネチア銀獅子賞、先日はゴールデン・グローブ賞も取った「パワー・オブ・ザ・ドッグ」も配信で見たが、100年前のアメリカの陰気な牧場主の同性愛の話は覇気がなかった。近年の賞取りものは出来損ないばかりだ。映画は愉快で血が騒いで肉も躍ってくれないと話にならんわと、改めて思った。