東大は河瀬直美、早稲田は是枝裕和…対照的だった映画監督の大学入学式でのスピーチ
早稲田の是枝監督は対照的だ。
自然なユーモアにあふれている。自分の早稲田時代、ほとんど学校には来なかった。サークルもつまらなかった、と体験談を話し、それらがみな面白い。ひたすら映画館に通い、池袋文芸坐に通い出したら高田馬場にすら来なくなった。
そして高校時代の遠藤先生の話。この授業がつまらなかった。面と向かって「つまらない」と言ったこともある。「なぜつまらないのですか」と先生に聞いたら、「自分の意見を押し付けたくない」と言われた。当時はそれが逃げだと思った。が、映画を作り始め、作品は無限な解釈に開かれていることがわかり、先生に謝りの手紙を書いた。そのうえ今度は大学がつまらなかったから映画館が自分の大学だった。何が自分にプラスになるかわからない。
「今の皆さんの価値基準に照らして役に立つか立たないかで時間を捉えるのはやめたほうがいい。そんなことで物の価値は決まらない。むしろテレビやネットがいいぞ、見ろ、買えと言い募るものに目もくれずに自分だけのお気に入りの城を作ったほうがいい」