追悼“歌舞伎界の異端爺”市川左團次さんの真顔で「どなたさまですか?」にヒヤリ
「僕の浴衣と同じぐらいラクそうですね」
取材当時74歳の大ベテランが、自分は「人に教える域にまで達していない」と話す姿に、芸事の奥深さを痛感せずにはいられなかった。
以降も、お会いするときは必ず「どなたさまですか?」と真顔で尋ねてきた。で、こちらは毎回ヒヤリとするのだが、決まって気さくに話してくださった。記者が着用していたシャツワンピースに興味を示し、「僕の浴衣と同じぐらいラクそうですね」と笑った顔も忘れられない。
天国でもきっと変わらずお茶目に振る舞われるのだろう。歌舞伎界の異端爺こと市川左團次さん。心より、ご冥福をお祈りいたします。
(文=小川泰加/日刊ゲンダイ)