著者のコラム一覧
北島純映画評論家

映画評論家。社会構想大学院大学教授。東京大学法学部卒業、九州大学大学院法務学府修了。駐日デンマーク大使館上席戦略担当官を経て、経済社会システム総合研究所(IESS)客員研究主幹を兼務。政治映画、北欧映画に詳しい。

映画で理解するLGBTのリアル 日本は「歌舞伎」「宝塚」で性の多様性を受け入れてきた

公開日: 更新日:

 トイレや浴場の設計運用を工夫することで性犯罪を抑止したり、テストステロン測定に基づく客観的基準を導入してスポーツ競技の公平性を確保したりすることは技術的に相当程度に可能であろう。

 むしろ、イスラム国家チェチェンでの凄まじいLGBT弾圧を描いたデビッド・フランス監督「チェチェンへようこそ ~ゲイの粛清~」(20年)のように、言われなき社会的差別を受けているジェンダー少数者の苦悩に光を当て、人間としてその生を尊重する制度と慣行をつくっていくことが大切ではないだろうか。

 最後に、キアヌ・リーブス主演、チャド・スタエルスキ監督の「ジョン・ウィック:パラベラム」(19年)も必見だ。「裁定人」を演じたエイジア・ケイト・ディロンは「ノンバイナリー」を自認している。ノンバイナリーとは、男性や女性という二者択一の線引きを超えた性自認の在り方。日本では歌手・宇多田ヒカルが21年に公表している。

 男優でもなく女優でもない、一人の俳優としてのディロンの凜とした演技にただただ引き込まれる。性自認の在り方が多様化するという変化を恐れるのではなく理解を深めること。それは、映画をそして社会を、より豊穣なものにすることだと思われるが、いかがであろうか。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    演技とイケオジぶりで再ブレーク草彅剛と「10億円マンション売却説」中居正広氏との“絆”

  2. 2

    泉ピン子が終活をやめたワケ「渡る世間は(水原)一平ばかり!」スペシャルインタビュー

  3. 3

    阪神からの戦力外通告「全内幕」…四方八方から《辞めた方が身のためや》と現役続行を反対された

  4. 4

    キムタク一家の妹Kōki,は映画主演の裏で…フルート奏者の姉Cocomiの話題作りと現在

  5. 5

    かんぽ生命×第一生命HD 人生設計に大切な保険を扱う大手2社を比較

  1. 6

    米田哲也が万引きで逮捕!殿堂入りレジェンド350勝投手の悲しい近況…《苦しい生活を送っていたのは確か》

  2. 7

    イスラエルにあなたの年金が流れていく…厚労省「ジェノサイド加担投資」引き揚げ“断固拒否”の不可解

  3. 8

    坂本花織の世界選手権66年ぶり4連覇に立ちはだかる…国際スケート連盟の「反トランプ感情」

  4. 9

    カーリング日本女子が到底真似できない中国の「トンデモ強化策」…世界選手権では明暗クッキリ

  5. 10

    公表された重点施策で露呈…JR東海の株価低迷と時代遅れの収益構造