劇団桟敷童子「海の木馬」が告発する歴史の闇に埋もれた悲劇
到着した「震洋」を垣間見た村人がささやく。「波があれば先に進まない。あれは海の木馬だ」と。
軍の情報の脆弱さから何十回となく繰り返される出撃命令と待機命令。そして敗戦。だが、狂気の部隊長が出撃命令を出す。そして悲劇が……。
モデルとなったのは敗戦の翌日に誤報による出撃準備中に震洋の燃料が漏れ、引火。震洋全艇が爆発し111人の犠牲者を出した第128震洋隊の爆発事故だ。敗戦直後の混乱で自決騒動や証拠隠滅で全国で何件もの爆発事故が起きた。128震洋隊の悲劇も、報道されることなく責任も追及されず、歴史の闇に埋もれた。
理不尽な旧日本軍の隠蔽体質は現代にも連綿と引き継がれている。国有地売却を巡る財務省の公文書改ざん問題で、改ざんを強いられ自死した近畿財務局元職員の赤木俊夫さんの事件など枚挙にいとまがない。
死者を象徴する白い砂が天井から降りしきる静かな幕切れの美しさ。生き残った青柳を演じた小野武彦の透徹した視線と葛藤が戦争の理不尽を静かに告発した。原口が狂気と無能の隊長を好演。
★★★★
作=サジキドウジ、演出=東憲司。11日まで。錦糸町すみだパークシアター倉。