三浦英之著「太陽の子」、この書き手は愚直なまでに「ペンは剣よりも強し」を信じている
ぼくは著書をすべて読んでいるわけではないが、満州建国大学の興亡を描いた力作『五色の虹』を、同大OBを父親にもつ知人から教えられて、三浦さんの書き手としての並外れた力量を知った。同時にこの書き手が誠実に、ときに愚直なまでに「ペンは剣よりも強し」を信じていることも。
『太陽の子』でも書き巧者ぶりは遺憾なく発揮されている。アクロバティックな印象さえ与える筆致はときにミステリー小説を思わせ、評価の分かれるところかもしれないが、高いリーダビリティの理由でもあるだろう。
著者の立つ場所においては、ノンフィクションとフィクションは「まぜるな危険」の関係。フィクションは徹底的に排除される。あくまで取材に基づくファクトから高純度のドラマティックな要素を抽出し、丹念に調合していく細やかさが求められる。三浦さんはその手際がもう超絶技巧レベルなのだ。