テレビの「街で外国人観光客に聞きました」ってヤラセはない? “ニッポンすばらしい”ばかり
どんな編集をしてもクレームなし
富士山の弾丸登山は危険とされているのに、5合目で「今から一気に頂上をめざすんだ」という外国人グループに、「がんばって」と声をかけるリポーターは無定見もいいところ。ここまでくると、もうBPO(放送倫理・番組向上機構)の審議案件である。
なぜこんな安直な企画が氾濫するのか。情報番組の制作会社ディレクターは「撮れ高がよく、カネがかからないからです」と裏事情を明かす。
「日本人が“暑いです”“おいしいです”と話しても当たり前すぎて使えませんが、外国人がちょっと大げさな身ぶりと表情でしゃべってくれれば画になります。日本をほめるので視聴者のウケもいい。そして、なによりもおカネも手間もかからないんです。事前の取材交渉はいらないし、出演料もゼロ。現場にカメラとD(ディレクター)が出かけるだけですから、予算を削られてるワイドショーとしてはおいしいですよ」
そして、もうひとつのウマミはどんな編集をしてもクレームが来ないということ。日本人にインタビューしたものだと、放送後に「私はあんなことは言っていない」とトラブルになることもあるが、外国人観光客なら放送するころには帰国してしまっている。何の取材なのかと聞かれることも、ほとんどないはずだ。制作スタッフは番組の都合に合わせていくらでも編集できるのだから、こんな楽なことはない。
秋には、京都・渡月橋からの紅葉見物の外国人に「赤い葉っぱは初めて見たわ」と言わせ、近ごろ団体ツアー客に人気という居酒屋飲みをのぞいて、カメラの前で「刺し身サイコ~。福島の水? 関係ないよ」とはしゃがせるのだろうな。こんな番組特集、もうやめたら。
(コラムニスト・海原かみな)