ジャニーズ性被害「救済制度」“国の関与”めぐり賛否のナゼ…23年前に問題視も国会でスルー
23年前の国会質疑で問題視されていたジャニー氏の性加害
2000年4月13日の衆院「青少年問題に関する特別委員会」。自民党の阪上善秀氏(2019年死去)は「最も深刻な問題であるジャニー喜多川社長のセクハラ疑惑についてお聞きしたいと思います」と切り出し、こう続けていた。
「報道によれば、ジャニー喜多川社長は、少年たちを自宅やコンサート先のホテルに招いて、いかがわしい行為を繰り返しておるという内容のものであります。なぜ少年たちがこんな行為に耐え忍んでいるかといえば、ジャニー喜多川社長に逆らうと、テレビやコンサートで目立たない場所に立たされたり、デビューに差し支えるからというのであります」
さらに阪上氏は、ジャニーズ事務所に所属していたという少年の母親から独自入手した手紙を読み上げた。
「少し長くなりますが、御紹介をさせていただきます。うちの現在高校2年生の息子も、中3の冬にオーディションに合格し、約1年間ジャニーズジュニアをしていましたが、事務所からのコンタクトがなくなり、自然にやめたような形になりました。ずっと後になって息子から聞いたのは、オーディションに受かってから初めてレッスンに行ったとき、先輩のジュニアから、もしジャニー喜多川さんから、ユー、今夜はホテルに泊まりなさいと言われたとき、多分ホモされるかもしれないけれども、それを断ったら次から呼ばれなくなるから我慢しろと教えられたそうであります」
そして、警察庁などに対し、こう迫っていたのだ。
「ジャニー喜多川氏はセクハラを行った後に、数万円の金銭を少年たちに与えておりますが、東京都や大阪府などで定められた青少年健全育成条例では買春処罰規定があります。例えば東京の場合、「何人も、青少年に対し、金品、職務、役務その他財産上の利益を対償として供与し、又は供与することを約束して性交又は性交類似行為を行なってはならない」とあります。この規定に抵触するのではありませんか」
「ジャニー喜多川氏のこのようなセクハラ行為は、今後警察庁としてどのように追及し、捜査をされようとしておりますのか(略)ジャニーズ事務所所属タレントが一日署長を務めたり、所轄署に差し入れをしていることが捜査に影響を与えているのではないかという意見もよく聞くわけでございますが(略)」
■法務省や警察庁の担当者はノラリクラリはぐらかす
これに対し、出席していた法務省や警察庁の担当者は「個別の案件については答弁を控えたい」などとノラリクラリ。真正面から取り上げようともしていなかった。少なくとも、この時、警察庁などが捜査するなど対応してれば、その後の性加害は防げたのではないか。
「ジャニーズ性加害問題当事者の会」が「国の関与」を求めるのも理解できるだろう。
ちなみに阪上氏は、性加害を認定した「外部専門家による再発防止特別チーム」が報告書で指摘していた「メディアの沈黙」に関しても、この国会質疑でこう言っていた。
「知り合いの芸能プロダクションの元社長からこんな話を聞いたのであります。ジャニーズ事務所が日本の芸能界を牛耳っているため、ジャニーズ事務所に逆らうとタレントを引き揚げられて番組ができなくなってしまうというのであります。それで、テレビ局は遠慮して、ジャニーズ事務所に関する不祥事を放送できないそうであります」
「マスコミ、新聞においても、ニューヨーク・タイムズがこの問題を報じておるのにもかかわらず、日本のマスコミはへっぴり腰だという批判を受けておるのもその辺に根拠があるのではないかとおっしゃったのであります」
国会質疑で問題視されながら、警察や大手メディアはなぜ、ジャニー氏の性加害問題を無視し続けたのか。「同調圧力」で片づけられる話ではない。