“トカちゃん”こと渡嘉敷勝男さんがテレビから消えたワケ…転機は還暦での独立だった
渡嘉敷勝男さん(ボクサー出身タレント/63歳)
井上尚弥が4階級制覇を達成するなど、圧倒的に強い選手の活躍でボクシング界、格闘技界が盛り上がっている。日本のボクシング界はこれまで多くの世界チャンピオンを輩出してきたが、渡嘉敷勝男さんもそのひとり。引退後はタレントとして「風雲!たけし城」(TBS系)などで活躍した。最近、テレビで見る機会が減ったが、今、どうしているのか。
渡嘉敷さんに会ったのは、東京メトロ・中野新橋駅から徒歩4分の渡嘉敷ボクシングジム。
「還暦を機に、20代から所属していた大手芸能事務所を出たんです。今もタレントの仕事はときどき入りますけど、このジムの経営があるから長い時間をとられる遠方とかレギュラーの仕事とかは受けにくいんですよ」
渡嘉敷さん、まずは笑顔でこう言った。
「事務所を出たのは、YouTubeを自由にやりたかったことが大きかった。テレビの仕事で知り合ったディレクターに勧められ、個人の『トカちゃんねる』と、飲み仲間で元世界チャンピオンの竹原慎二クンと畑山隆則クンと『ぶっちゃけチャンネル』を始め、月8本配信してますが、とくに『ぶっちゃけチャンネル』は登録者数が39.1万人と調子が良くて。おかげで、ジムの会員がものすごく増えているんです(笑)」
渡嘉敷さん、ニコニコのはずだ。
「ここのジムは、40歳を境にボクシングを中心に活動したいと思い、当時住んでいた場所の近くで見つけ、37歳のときに居抜きで借りました。YouTubeを始める前より会員さんは増えています。ここ3年は、無料体験を含めて毎月20人が新しく来て、その半分が会員になってくれるんですよ。いい選手も見つかりやすくなりました」
プロ選手も10人在籍しているという。
「指導している選手がみんないい成績を残しているので、来年はプロが30人、新人王も3、4人出るかな(笑)。いつかは世界チャンピオンを育てるのが夢。10年後には73歳なので、今はこのジムの仕事に集中するときだと思っています」
ジムは月曜定休で、ウイークデーの営業時間は正午から夜9時半まで。渡嘉敷さんは11時半ごろ出てきて、帰宅は夜10時を過ぎる。
「選手らが帰った後や休憩時間に、自分も鍛え上げてます。90キロのバーベルを持ち上げたり、腹筋100回、腕立て80回……。スタッフがワタシを入れて5人しかいないから、身長156センチなのに、ヘビー級の選手がミット打ちをするとき、ワタシがミットを持って受けるので、鍛えないと肩が壊れちゃうんですよ」
どうりで、筋肉隆々なわけだ。
「63歳ですから、筋トレがしんどくないといえば嘘になる。でも、今、うちのジムも、ボクシング界全体も好調なので、やり甲斐がありますね」
スターの井上尚弥選手の存在は大きい。強さの秘密はどこに?
「家庭環境がいい。ボクシングをやっていたお父さんが、井上選手が6歳の頃から指導してきたのですが、無理やりではなく、やりたい気持ちをうまく導いた。お母さんの栄養を考えた食事や、弟も選手、というのも、ボクシングに集中できる環境だったんですね」
「井上選手は試合中、『ここだ』というときに、自分で判断して勝負に出て好結果を出せる運もある。世界チャンピオンは強いだけじゃなく、運もないとなれないんです」
渡嘉敷さんもチャンピオンを育てるべく、効果的なトレーニング法を本やYouTubeから学んで積極的に取り入れているという。息抜きは?
「酒かな(笑)。たまに会員や後援会の人と飲みに出て、家では日本酒を冷やで。家の中には世界一好きな女性が2人--家内と一人娘がいるので、これもまた楽しい。ワタシは“ボクサーあるある”で忘れっぽくて、家内に小言をもらうことが多い。『うるさいなあ』と思いながらも、飲むと昔の楽しかったことが思い出されて、すぐハイテンションになっちゃうんです(笑)。特殊技能じゃないかと思いますね」
結婚38年でこう思えるとは羨ましい。