ナイツ塙が漫才協会会長への就任半年「お笑い界の“巨人”であるヨシモトに肩を並べたい」
「東洋館のお客を笑わせなければ、本当に面白いネタではない」
同時にナイツも実力をつけ始めた。08年に初めて進出したM-1グランプリ決勝ではその後に代名詞ともなる「ヤホー漫才」を披露して3位に輝き、「浅草の星」が誕生した。
「あの当時、東洋館以外の舞台にもたくさん立っていたのですが、東洋館で良かったネタは、どこでやってもウケたんです。東洋館のお客を笑わせられなければ、本当に面白いネタではないんですよ。それまではいろんなフォームを試して、相方がど突いてツッコミしたり、テンポをめちゃくちゃ落としてみたりしていました。
でも、東洋館のお客にも若い方にも両方ウケたのは、『今日はお足元の“臭い”なかに』みたいな言い間違えのボケだったんです。だったら言い間違えだけをするネタを作ってやろうとしてできたのがヤホー漫才でした。協会に所属してなかったら、できていなかったでしょうね」
前身団体である「漫才協団」の発足から、24年で60周年を迎える協会はどこに向かっていくのか。
「やっぱり、ヨシモトのように自分たちの大きな劇場をたくさん持って、そこの劇場だけで東京の芸人たちがご飯を食べていけるようになるっていうのが、永遠の目標ですね。お笑い界のジャイアンツであるヨシモトに肩を並べたいです。東洋館はキャパが200人余りですけど、ヨシモトのなんばグランド花月なんかは800人以上入れられて、そうなると当然出演者に対するギャラも全然違います。
しかも養成所や裏方スタッフの学校まであって、ヨシモトにはお笑いで食べていく環境がこれ以上なく揃っているんですよ。でも、面白さが負けているなんてことは決してなくて、恵まれていない環境で培った人間力が東京芸人の武器です。23年もM-1決勝の審査員をやるんですが、東京の地下ライブでずっと苦労してきたモグライダーは、それだけでもう5点アップですよ(笑)」
24年春には、自身が初めてメガホンを取ったドキュメンタリー「漫才協会 THE MOVIE~舞台の上の懲りない面々~」が公開される。どんな映画になるのか。
「簡単に言うとお金じゃないということなんです。東洋館のギャラは、その日のチケット売り上げを出演者全員で割り勘するので、1人あたり数千円にも満たない。だからアルバイトをしている師匠もたくさんいますし、僕たちが出演しても浅草のコインパーキング代のほうが高くつくくらいなんです。
今の時代ならYouTubeや配信の方がはるかに稼げるのに、どうして舞台に立って漫才をしたいのか。もう、普通の人からしたら意味が分からないと思いますが、じゃあ、本当に偉いのは、果たしてお金持ちなのかっていうことですよね。まあ、辞めない芸人も全然偉くはないんですけど(笑)」