プロドラマーあらきゆうこ「オノ・ヨーコさんに初めて会った時は背筋が伸びるような感覚が」
あらきゆうこ(プロドラマー)
2月21日に50回目の誕生日を迎えるプロドラマー・あらきゆうこにとって故ジョン・レノンの妻オノ・ヨーコ(90)との邂逅とコラボレーションは、飛び抜けてエキサイティングな出来事だった。
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オノ・ヨーコさんのレコーディングセッションに加わったり、ライブツアーのドラマーとして参加した話の前に……やっぱりジョン・レノンとヨーコさんとの息子、ショーン・レノンとの出会いからお話ししましょうか。
場所は、新宿・歌舞伎町にあったライブハウス「リキッドルーム」でした。元フリッパーズ・ギターの小山田圭吾リーダー率いるCornelius(コーネリアス)のドラマーでのライブです。
小山田さんのことは“小山田リーダー”と尊敬をこめて呼んでます。その日、ずっと前から大好きだった音楽ユニットのCibo Matto(チボ・マット)のメンバーのひとり、本田ゆかさんが見に来てくれていたんです。ライブの後に「ゆかさんが『凄く良かった』って褒めてたよ」と聞かされ、本当にうれしくなってゆかさんに会いに行き、その場にいた外国人男性に「2人一緒の写真を撮って下さぁ~い!」って頼んだんです。
すると周囲の雰囲気が「おいおい、それ、マズくないか!?」ってなって……。ゆかさんと出会えたことに舞い上がってしまい、その外国人男性が誰なのか、ちゃんと顔とか見なかった。そうなんです! ジョン・レノンとヨーコさんとの間に生まれた息子さん、ショーンだったんですよ!
コーネリアスのファンだったショーンは、ニューヨーク在住で一緒に音楽活動をやっていたゆかさんと日本を訪れ、そこで偶然にも2人とご縁がつながりました。
私もメンバーのミクスチャー系バンド・SMORGAS(スモーガス)のリミックスをその後、ゆかさんにお願いすることになって。そこでもショーンがギターで参加してくれたり。
■「おぉ! オノ・ヨーコさんだぁ~!」
2009年の1月だったかな。ニューヨークを訪れた時、ゆかさんと同じダウンタウンのシェアハウスに滞在させてもらって。ちゃんとしたスタジオがあり、地下にキッチンがありました。ゆかさんの手料理を食べていた時にヨーコさんがフラッといらして。さすがに「おぉ! オノ・ヨーコさんだぁ~!」って思いましたね。
やっぱり緊張というか、身構えるというか、ピシッと背筋が伸びるような感覚がありました。でもヨーコさんって偉ぶったり、上から目線だったり、そんなことはありませんでした。
この時、ヨーコさんから「あなたたち、いいバイブス(波動、テンションなどの意味)だわね」と私とゆかさんに声をかけてもらえたのはうれしかった。
その頃、ゆかさんとショーンたちは「キメラ・ミュージック」という新しい音楽レーベルを立ち上げ、ヨーコさんが「プラスティック・オノ・バンド」を復活させてニューアルバムを出すことになっていたこともあり、ニューヨークでヨーコさんにショーン、ゆかさん、小山田リーダーたちを交えてセッションを重ね、曲作りを進めていくことになりました。
ヨーコさんとのレコーディングやライブは、ご本人に対して普段会った時、私が勝手に感じる緊張感は全くなく、ある意味、ミュージシャンとして対等に音を出すことができたと思ってます。
アーティストのヨーコさん、ドラマーとして自分との関係性は常にフラットな気持ちで、いつもリラックスしてプレーすることができました。