だれもが首をひねった 演技派俳優・古尾谷雅人の自殺の謎
<2003年3月>
長身で演技派として評判が高かった古尾谷雅人が2003年3月、自ら命を絶った。45歳だった。はたからは順調に俳優人生を送っているとみられていたが、死後、経済的苦境や心の闇が次々に明らかになった。
25日、午後6時ごろ、外出から帰った妻で元女優の鹿沼絵里(当時50)は夫が寝室から出た気配がないのに気づいた。部屋をのぞいてみると、天井に渡された鉄パイプに空手の黒帯が結ばれており、そこには身長188センチの古尾谷が床につかないように足をくの字に曲げた姿でぶら下がっていた。
遺書はなかったが、明らかな自殺だった。しかし、だれもが首をひねった。仕事の面でも家庭の面でも順風満帆にみえていたからだ。80年に映画「ヒポクラテスたち」で報知映画賞を受賞して脚光を浴び、90年には「宇宙の法則」で毎日映画コンクール男優主演賞を受賞。90年代後半にはテレビドラマ「金田一少年の事件簿」の警部役が当たり役になり、ファンは確実に広がっていた。
だが、その後の報道では金銭面で苦労していたことがわかった。まず特別区民税を450万円も滞納。さらに、別口の借金で自宅マンションに550万円の抵当権が設定されていることも判明した。