ピエール瀧「麻雀放浪記」公開で“自粛”の流れは変わるのか
坂本にならえば、「観たくない人は観なければいい」というわけだが、果たして、東映の決定は英断になるのか。映画評論家の秋本鉄次氏は「大英断だと思います」とこう言う。
「日本に限らず、海外でも出演者の不祥事で公開中止になることはあります。しかし、映画はテレビと違って有料で、観客が自分の意思で観る・観ないを選べる。嫌な人は観なければいいだけの話です。東映は『麻雀放浪記2020』の前売り券について、(瀧容疑者の出演を)不快に思う人には払い戻すと言っている。観客の意思を尊重しています。あまりに自粛ムードが強すぎると、映画や音楽などの芸術は成り立たなくなる。業界がどんどん萎縮して、ありもしない“黒い噂”が流れただけで出演を見送る、なんてことが起こるかもしれません」
そこへ東映が一石を投じたわけで、会見を開いて堂々と“公開宣言”。これで自粛の流れが変わるかもしれない。
秋本氏も「そもそも優等生ばかりが集まって作った映画なんてつまらないですよ。今後は他の映画も、出演者に不祥事があった場合でも公開するパターンが増えるかもしれません」と話す。
白石監督は「ガイドラインを作るべき」と提唱していたが、それも必要だろう。いずれにせよ、今回の決定が“吉”と出れば、映画業界が大きく変わることだけは間違いない。