<8>朝のルーティンワークは自動販売機の小銭回収…ドン・ファンの生きがいだった
もっとも近所には西牟婁総合庁舎などがあり、相当数の方々が働いているので、私は何度か「奇麗にして貸し出したらいい」と進言したこともあったが、ドン・ファンには興味がなく、荒れ放題のままだった。
会社の前にはコーラやコーヒー飲料が並んでいる自動販売機が10台ぐらいあり、連れてきたイブと一緒に一台一台、お金を回収する。これは絶対に従業員には任せないドン・ファンの生きがいといってもいい朝のルーティンワークだった。たばこの販売機もあって毎日4万円近くの売り上げがあるらしく、集めた小銭をうれしそうに事務所脇の計算機に入れて、表示された金額を帳簿に付けていた。
■文句を言わずに働いてくれるからありがたい
「自動販売機はねえ。雨が降っても風が吹いても文句を言わないで働いてくれるから、ありがたいものだよねえ」
ワンマン社長であるから嫌気が差して辞職する従業員も多いし、啖呵を切って辞めていった従業員も少なくなかったと耳にしている。古くからドン・ファンと交友があった麗子さんは何度も彼からのプロポーズを断っていたが、付き合いを絶つことはなかったので彼から信頼されていた。