著者のコラム一覧
髙橋裕樹弁護士

「すべては依頼者の笑顔のために」がモットー。3000件を超す法律相談実績を持ち、相続や離婚といった身近な法律問題から刑事事件、企業法務まで何でもこなすオールマイティーな“戦う弁護士”。裁判員裁判4連続無罪の偉業を成し遂げた実績を持つ。アトム市川船橋法律事務所。

市川猿之助さんの逮捕容疑は母親への自殺ほう助のみ…これはどう考えるべきか?

公開日: 更新日:

 6月27日に歌舞伎役者で俳優の市川猿之助さんが自殺ほう助の被疑事実で逮捕されました。両親が亡くなるに至った事件は5月18日でしたので、1カ月以上もの期間を経ての逮捕になります。

 もっとも、今回の逮捕は猿之助さんのお母さまに対する自殺ほう助のみで、お父さまである市川段四郎さんの死亡に関する罪では逮捕されていません。これはどう考えたらいいのか。お父さまの死亡については、自殺ほう助ではなく、殺人罪などが成立する可能性があるためではないのでしょうか。

 というのも、市川段四郎さんは事件当時、要介護認定を受けていた、認知症との診断を受けていたのではないかとの事情があるからです。

 そもそも、自殺ほう助罪が成立するのは、自殺をしようとしている人が、死の意味を理解し、かつ意思決定することができる能力を有していることが大前提です。一方、死の意味を理解できない幼児や、認知症で判断能力が著しく低下している高齢者をそそのかして自殺をさせた場合は、自殺ほう助ではなく、殺人罪ということになります。

 また、判断能力のある成人であっても、脅迫を受けたり、だまされるなどして心理的に追い詰められ、自殺をすべきかどうかという状況認識を誤らせて自殺に追い込んだような場合は、意思決定が有効ではない(瑕疵ある意思決定)として、同じく殺人罪となる可能性があります。

 当時、市川段四郎さんの認知症がどこまで進み、判断能力がどのくらい低下していたのか。その事情に一番詳しいお母さまの証言を得ることはできなくなっています。そして猿之助さんをめぐる報道が世に出ることを、ご両親がどのくらい悲観し追いつめられたのか、それがどう自殺につながったのか。自殺直前の状況を語れるのは、もはや猿之助さんしかいません。

 市川段四郎さんの精神状態や介護状況については、入通院の記録や介護認定記録などから、ある程度は判別、推測することができます。警察は客観証拠の取得をしているものと思われますが、やはり最大のカギは猿之助さんの証言になるでしょう。事実認定までに相当の時間がかかるのは仕方ない事件だと思います。

  ◇  ◇  ◇

■厚生労働省のホームページで紹介している主な悩み相談窓口

▽いのちの電話

 0570-783-556(午前10時~午後10時)

 0120-783-556(午後4~9時、毎月10日は午前8時~翌日午前8時)

▽こころの健康相談統一ダイヤル

 0570-064-556(対応の曜日・時間は都道府県により異なる)

▽よりそいホットライン

 0120-279-338(24時間対応)

 0120-279-226(岩手、宮城、福島各県から、24時間対応)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    【独自】フジテレビ“セクハラ横行”のヤバイ実態が社内調査で判明…「性的関係迫る」16%

  2. 2

    人事局付に異動して2週間…中居正広問題の“キーマン”フジテレビ元編成幹部A氏は今どこで何を?

  3. 3

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  4. 4

    中居正広氏&フジテレビ問題で残された疑問…文春記事に登場する「別の男性タレント」は誰なのか?

  5. 5

    TV復帰がなくなった松本人志 “出演休止中”番組の運命は…終了しそうなのは3つか?

  1. 6

    "日枝案件"木村拓哉主演「教場 劇場版」どうなる? 演者もロケ地も難航中でも"鶴の一声"でGo!

  2. 7

    フジテレビに「女優を預けられない」大手プロが出演拒否…中居正広の女性トラブルで“蜜月関係”終わりの動き

  3. 8

    別居から4年…宮沢りえが離婚発表「新たな気持ちで前進」

  4. 9

    ビートたけし「俺なんか悪いことばっかりしたけど…」 松本人志&中居正広に語っていた自身の“引き際”

  5. 10

    フジテレビを襲う「女子アナ大流出」の危機…年収減やイメージ悪化でせっせとフリー転身画策

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…