大動脈二尖弁の再手術で考えさせられたこと
ただ近年は、生体弁を勧めるケースが増えてきました。「TAVI」(経カテーテル大動脈弁留置術)という血管内治療が登場したことで、将来的に生体弁が劣化しても、再手術せずに新たな生体弁を留置することが可能になったからです。しかし、だからといって安易に生体弁を選択すればいいのかといえば、そうではありません。
■安易に生体弁を選択するだけではいけない
先日、28歳の男性患者の弁を交換する手術を行いました。その患者さんは13歳の時に他の病院で二尖弁による大動脈弁逆流で生体弁に交換する手術を受けていました。15年経ってその生体弁が壊れてしまい、再手術が必要になったのです。
子供の場合、交換した生体弁の“使用期限”は10年程度といわれていますから、よく持った方だといえます。ただ、1回目の手術では「なぜ、こんなことをやったのだろう?」と思わせるような処置が行われていました。弁の交換と同時に、大動脈を切開してパッチを当て、大動脈を広げる治療が施されていたのです。当時、患者さんがまだ子供だったことで、十分な大きさの生体弁に交換できなかったためにそうした処置が行われたのでしょう。これが“余計なこと”でした。その大動脈を広げる処置が行われた部分に細菌が取り付いて感染性心内膜炎を起こし、生体弁を破壊してしまったのです。