<1>「記憶」と「想起」 まず脳の仕組みを知ることが大事
記憶には、短期記憶と長期記憶の2種類があります。短期記憶は、たった今の記憶。長期記憶は、ある程度時間の経過した記憶です。
年を取ると、アルツハイマー型認知症などの病気でなくても“物忘れ”を起こしやすくなるのは、短期記憶として保存された記憶が消去されたり、長期記憶として保存されているものがスムーズに取り出しにくくなったりするため。また、加齢による注意力の低下で「覚えてもすぐ忘れてしまう」こともあります。ただし、脳の仕組みを知っていれば、物忘れを極力抑えられます。
たとえば、ある人の電話番号を覚えるとしましょう。数字の羅列は、短期記憶として脳の中の「海馬」と呼ばれる部分に保存されます。海馬はエンドレステープのように回り続けていて、短期記憶は瞬時に記憶され、すぐに消されますが、“ある人”が大切な恋人だとすれば別です。彼女への愛情から、その電話番号は海馬から大脳表面の神経細胞へ送り込まれネットワークを作り上げて、長期記憶となります。
脳はすべてを記憶していく記憶装置ではありません。忘れていくのが基本です。しかし、一般的に印象に残ったものや覚えようと意識したものは海馬で選択され、長期記憶になります。つまり、しっかりとした記憶にしたいと思えば、「記憶しようと意識する」「何か強く印象付けるものと合わせて覚える」「何度も繰り返して覚える」ということが必要になります。