多発性骨髄腫には治療をせずに経過観察で済むタイプがある
印鑑販売業のYさん(60歳・女性)は、健診で「貧血があるので医療機関を受診するように」と指示されました。しかし、昨年も同様の指摘をされながらとくに大きな問題はなかったため、放置していました。
ところが、半年ほどたってから腰痛が表れ、立ち上がる時にいよいよつらくなってきたため、近所の整形外科を受診しました。すると、そこで「これは血液の病気」と告げられ、私が勤務する病院に紹介されてきたのです。
血液検査の結果、貧血、総タンパクの増加、血清免疫グロブリンの異常タンパク(Mタンパク)を認めて「多発性骨髄腫」の診断となり、入院して精査することになりました。骨髄穿刺検査では、血液をつくる細胞が減り、形質細胞(骨髄腫細胞)が約50%を占めていました。
全身の骨X線写真では、頭蓋骨、大腿骨に径3センチほどの丸い溶骨病変(パンチドアウト)を認め、他の骨にも多数、同様に大小の溶骨した所見がありました。
Yさんは、担当医から「骨が折れそうな箇所がたくさんあります。注意して動くように」と言われました。しかし、入院の翌日に、その不安が的中してしまいます。朝食を食べようとして起き上がる際、右手をつくと激痛があり、かばって左手をついたら左手にも痛みが走ったのです。両腕の「病的骨折」(溶骨したところの骨折)でした。