名郷直樹
著者のコラム一覧
名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

ビタミンCとがん 治療・予防に有効とする研究はあるのか

公開日: 更新日:

 大量のビタミンCはがんの予防に有効という説もあります。しかし、実際にそのような結果を示した質の高い研究はありません。50歳以上の内科医を対象に、500ミリグラムのビタミンCを投与して、8年間のがんの発生を検討したランダム化比較試験がありますが、ビタミンCを飲まないグループと全く差がないという結果でした。

 また、女性を対象とした研究もありますが、同様に500ミリグラムのビタミンCの投与で9・4年間の長期にわたって追跡し、がんの発生が少なくなるという結果は得られていません。ビタミンCによるがんの予防効果はなさそうだというのが、これまでの研究結果が示すところです。

 がんについては、予防ではなく、治療効果について検討した研究もあります。123人の進行がん患者を対象に1日10グラムの大量ビタミンCを投与してプラセボ群と死亡率を比較していますが、いずれのグループも2年のうちに90%が亡くなっているという結果です。ビタミンC群で3年以上生存した人はひとりもいませんでした。がん患者に大量のビタミンCによる治療を自費診療で提供している医療機関もあるようですが、その効果について明確に示した研究はありません。

 効果のはっきりしない治療について、患者に費用を負担させるのは非倫理的な面があります。こうした実験的な治療は、きちんとデザインされた臨床試験として研究費などによって費用をカバーし、患者さんに負担なく提供すべき医療です。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    岡本和真と村上宗隆のメジャー挑戦に“超逆風” 大谷バブルをブチ壊したMLB先輩野手の期待外れ

    岡本和真と村上宗隆のメジャー挑戦に“超逆風” 大谷バブルをブチ壊したMLB先輩野手の期待外れ

  2. 2
    ロッテ佐々木朗希「強硬姿勢」から一転…契約合意の全真相 球団があえて泥を被った本当の理由

    ロッテ佐々木朗希「強硬姿勢」から一転…契約合意の全真相 球団があえて泥を被った本当の理由

  3. 3
    佐々木朗希の今季終了後の「メジャー挑戦」に現実味…海を渡る条件、ロッテ側のスタンスは

    佐々木朗希の今季終了後の「メジャー挑戦」に現実味…海を渡る条件、ロッテ側のスタンスは

  4. 4
    ドトールに注がれる「石丸効果」都知事選でヒモ付き隠さず3番手から猛追、株価も爆上がり

    ドトールに注がれる「石丸効果」都知事選でヒモ付き隠さず3番手から猛追、株価も爆上がり

  5. 5
    「あぶない刑事」100万人突破で分かった…舘ひろし&柴田恭兵“昭和のスター”の凄みと刑事役の人材不足

    「あぶない刑事」100万人突破で分かった…舘ひろし&柴田恭兵“昭和のスター”の凄みと刑事役の人材不足

  1. 6
    ソフトB山川穂高「無神経ぶり」改めて露呈…31試合ぶり本塁打も身内から異論噴出

    ソフトB山川穂高「無神経ぶり」改めて露呈…31試合ぶり本塁打も身内から異論噴出

  2. 7
    石丸伸二候補に大逆風…「恫喝」訴訟で2連敗、都知事選後の国政進出シナリオも狂いが

    石丸伸二候補に大逆風…「恫喝」訴訟で2連敗、都知事選後の国政進出シナリオも狂いが

  3. 8
    蓮舫候補に一発逆転の「神風」は吹くのか…7.7都知事選「一歩リード」の小池知事を猛追

    蓮舫候補に一発逆転の「神風」は吹くのか…7.7都知事選「一歩リード」の小池知事を猛追

  4. 9
    都知事選最終盤に飛び交う「蓮舫狙い撃ち」の怪情報…永田町に出回る“石丸2位”データの真の狙い

    都知事選最終盤に飛び交う「蓮舫狙い撃ち」の怪情報…永田町に出回る“石丸2位”データの真の狙い

  5. 10
    猛チャージ石丸伸二候補に広がる危機感…広島からは「あんなぁ都知事に押し上げちゃいけん」

    猛チャージ石丸伸二候補に広がる危機感…広島からは「あんなぁ都知事に押し上げちゃいけん」