著者のコラム一覧
名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

糖尿病の夫を見送った妻の多くが後悔すること

公開日: 更新日:

 高齢者の糖尿病治療の負の側面を象徴するような出来事が、患者さんが亡くなったときにしばしばあらわになります。糖尿病の夫を自宅でみとった妻が、何カ月かぶりに外来に来られて、次のように語る場面です。

「夫のことを思い出しては泣いてばかりいる毎日です。もうこれが最後というときには好きなものを何でも食べてもらってと思っていたのですが、そうする間もなく亡くなってしまいました。その後悔をいまだに引きずっています」

 糖尿病の患者さんでは、がんの末期であっても、食事ができる間は、「食事は何カロリー」「ご飯は何グラム」「甘いものは控えて」「缶コーヒーやお酒もなるべく我慢」というように、元気な時と同じような食事制限が続けられることがよくあります。

 血糖が200~300㎎/デシリットルになったら大変、HbA1cは7%未満に、という数字の呪縛は案外強固なものです。

 そうこうしている間に食事ができなくなってくると、もうそんなことを気にしていられない。何か食べたいものを食べさせたいなどと思うわけですが、時すでに遅し。食べられないまま、アッという間に亡くなって、最後の食事も糖尿病食という不幸なことは珍しくありません。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    西武ならレギュラー?FA権行使の阪神・原口文仁にオリ、楽天、ロッテからも意外な需要

  2. 2

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動

  3. 3

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  4. 4

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏の勝因は「SNS戦略」って本当?TV情報番組では法規制に言及したタレントも

  5. 5

    小泉今日子×小林聡美「団地のふたり」も《もう見ない》…“バディー”ドラマ「喧嘩シーン」への嫌悪感

  1. 6

    国内男子ツアーの惨状招いた「元凶」…虫食い日程、録画放送、低レベルなコース

  2. 7

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  3. 8

    首都圏の「住み続けたい駅」1位、2位の超意外! かつて人気の吉祥寺は46位、代官山は15位

  4. 9

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏圧勝のウラ パワハラ疑惑の前職を勝たせた「同情論」と「陰謀論」

  5. 10

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇