痛みや恐怖感を減らす VRで“気をそらす治療”の凄い効果
最近、話題になっているVR(バーチャルリアリティー)。仮想現実と訳され、娯楽のひとつとして定着しつつある。とくにスマホと組み合わせて使うVRゴーグルやVRヘッドセットは人気のアイテムで、今年のクリスマス商戦の目玉のひとつだった。実はこのVRがいま、医療の現場で使われようとしているのをご存じだろうか? 音や映像に熱中してその世界に浸ってしまうことで患者の気をそらせ、治療の痛みや恐怖を克服しようというわけだ。弘邦医院(東京・葛西)の林雅之院長に聞いた。
「医療従事者向けの学習ツールとして使われている手術シミュレーションなどVRを応用できる医学分野はさまざまですが、最近とくに注目されているのが痛みの治療です。鎮痛剤や医療用麻薬など痛みを抑える薬はたくさんありますが、長期間使用するとだんだん効かなくなる、依存性が出る、副作用が出るなどさまざまな問題が起こります。そこで期待されているのがVRディストラクション(気をそらせること)による治療です」
痛みが出たとき、患者の意識を痛みから別の対象にそらすと、痛みが軽減する。人は限られた数の刺激にしか反応できないからだ。物がぶつかったときに人がその場所に手を当てて痛みから逃れようとするのはこのためで、それが「手当て」の語源にもなっている。