「私は診察で訪問するたびに本人や家族と話をしてきました。病状が進行した時は特に、それからのことについてゆっくり話し合ってきたのです。娘さんが懸命に介護をする姿も見てきました。そんな状況を知っていたから、母親を一人で死なせるわけにはいかないと判断したのです」
医師として、友人・隣人として、深く長く接してきたからこその決断である。
それでも毎回、正解を選べるとは限らないという。「救命・根治・延命」から「死なせる医療」に切り替えるターニングポイントは確実にある。だが、いつがその分岐点かの見極めは、経験を積んできた小堀さんをもってしても、難しいという。