「マスクさえしていればいい」と思ってはいけない理由
■材質やつけ方で差が出る
公衆衛生に詳しい岩室紳也医師が言う。
「マスクが新型コロナウイルスの体への侵入を防ぐことが科学的に証明されたのですが、研究でもマスクなら何でもよいというわけではなく、素材により防御能力に差がありました。富岳のデータからは、一般的に使われているマスクでは不織布マスクに効果がありますが、布マスクだと吸い込みを抑える機能はいまいちだということがわかりました。多くの人が着用しているポリウレタンマスクについては言及していません」
東大医科研の研究では、ウイルスの吸い込み量はマスクなしと比べて布マスクだと60~80%に、不織布マスクだと53%に、外科用のN95マスクを密着して使用すると10~20%まで抑えられたという。しかし、この結果は「N95マスクは最も捕集しにくいといわれる0・3マイクロメートルの微粒子を95%以上捕集できることが確認されているマスク」とされている常識と矛盾する。
「ただし、これらの研究結果はあくまでも実験室内での話です。それですら適切に装着しなければその防御効果は低下し、マスク単体ではウイルスの吸い込みを完全には防ぐことができないことを東大医科研の研究グループも認めています。しかも富岳の実証実験では、マスクは正しく装着していても、20マイクロメートル以下の小さな飛沫に対する効果は限定的であり、マスクをしていない場合とほぼ同数の飛沫が気管奥にまで達すると報告しているのです」