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中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

子宮頸がんステージ2bで手術はNG 世界標準を無視して被害も

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 ところが、日本ではステージ2bの子宮頚がん治療で長く手術が推奨されてきました。2007年版のガイドラインでは広汎(こうはん)子宮全摘手術を推奨。2011年版で「広汎子宮全摘手術あるいは同時化学放射線療法が推奨される」と化学放射線治療の記載があるものの、手術を前に記載。ステージ2bの子宮頚がん治療で世界標準である化学放射線治療が、1番手に推奨されたのは今年の2022年版からです。

 2011年から放射線治療が少しずつ増えてきたとはいえ、2019年の治療実績は手術が4割に上ります。スウェーデンの実に6倍です。

 ランセットやニューイングランド・ジャーナルといった一流医学誌に掲載された論文から、放射線は手術と同等の生存率。化学放射線治療は放射線に勝ることが分かっていますから、三段論法的に化学放射線治療が手術を上回ると推測できます。つまり、化学放射線治療がベストです。

 最善の化学放射線治療に代わって手術が行われると、弊害があります。広汎子宮全摘手術では、子宮に加えてリンパ節と卵巣も切除。卵巣は女性ホルモンを分泌しますから、その補充は一生必要で、リンパ節切除による脚のリンパ浮腫が重く残ります。浮腫がある脚は2倍くらいの太さになりますから、温泉や海水浴には行きにくい。

 もちろん、化学放射線治療にも下痢や胃腸障害、吐き気などがありますが、一時的です。この点でも世界標準の化学放射線治療に分があります。男性も、手術がベストではないことを頭に入れておいてください。もし妻がマザーキラーに襲われたら、夫も他人事では済みませんから。

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