新型コロナワクチンはなぜ“企画倒れ”なのか 京大医生物学研究所准教授に聞く③
「しかし、そもそもコロナウイルスに対するワクチン自体、作るのが難しいと思います。事実、豚や牛、犬に対するワクチンはありますが、コロナウイルスを根絶できたものはありませんし、猫においては有効なワクチンすらできていません。呼吸器感染症で防御効果があるのは粘膜面に出てくるIgA抗体です。しかし、今回のmRNAワクチンのIgA抗体の誘導能は低い。時間がたてばIgA抗体も減って効かなくなる。それもウイルスが変異すれば対応できません。むしろ、変異したウイルスにワクチンを打ち続けるとリスクがあります。抗体にはウイルスの感染性を失わせる中和抗体と、その能力のない非中和抗体がありますが、結果的に後者の割合が増えて効かなくなってしまうからです」
■非中和抗体が増えてマイナス面が大きくなる可能性
仮にスパイクタンパク質に抗体がくっついて、ウイルス感染受容体を介しての感染を防いだとしても、新型コロナは別の方法でヒトの細胞に感染できるという。
「マクロファージなどの免疫細胞の表面にあるFc受容体と血中のIgG抗体が結合して、エンドサイトーシスと呼ばれる経路でヒト細胞に侵入することが可能です。この作用が中和抗体の作用を上回ると逆効果になります。ヒトのデングウイルスなどで見られる現象で、珍しいことではありません」