宮沢孝幸
著者のコラム一覧
宮沢孝幸京都大学ウイルス・再生医科学研究所准教授

京都大学ウイルス・再生医科学研究所附属感染症モデル研究センターウイルス共進化分野准教授。日本獣医学会賞、ヤンソン賞などを受賞。小動物ウイルス病研究会、副会長。

免疫の不思議…期待に反し抗体が感染を助長することがある

公開日: 更新日:

 新型コロナウイルスは主に飛沫感染と接触感染で感染する。どちらも、口から出たウイルスが、さまざまな経路を介して目や鼻、口、咽頭、肺に到達し、その部位で感染に必要なタンパク質を発現している細胞に感染する。なお、大便中のウイルスが人に感染するかについては決着がついていない。

 新型コロナウイルスが細胞に感染すると、最初に「自然免疫」というものが発動する。これは、新型コロナウイルスに特異的な反応ではなく、外来の微生物全般に対して働く防御機構であり、その効力には限りがある。

 自然免疫に引き続いて、「獲得免疫」という防御系が遅れて発動する。獲得免疫は、「液性免疫」と「細胞性免疫」に大別される。

 液性免疫は「抗体」が主役である。一方、細胞性免疫は、リンパ球の一種である「細胞傷害性Tリンパ球」がウイルス感染細胞を見つけ出し、細胞ごとやっつける。

 厄介なことに、コロナウイルスの場合、液性免疫(抗体)が効かないことがある。特にネコのコロナウイルスでは、抗体が感染を助長してしまう抗体依存性感染増強(ADE)現象が知られている。新型コロナウイルスがADE現象を引き起こすかどうかはいまだわからないが、新型コロナウイルスに近縁のSARSコロナウイルスでは、その現象が起こり得ることが知られている。これまでの研究成果を見る限り、液性免疫の他に細胞性免疫が重要な役割を果たしていることは確からしいが、個人差も大きいと考えられる。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    岡本和真と村上宗隆のメジャー挑戦に“超逆風” 大谷バブルをブチ壊したMLB先輩野手の期待外れ

    岡本和真と村上宗隆のメジャー挑戦に“超逆風” 大谷バブルをブチ壊したMLB先輩野手の期待外れ

  2. 2
    ロッテ佐々木朗希「強硬姿勢」から一転…契約合意の全真相 球団があえて泥を被った本当の理由

    ロッテ佐々木朗希「強硬姿勢」から一転…契約合意の全真相 球団があえて泥を被った本当の理由

  3. 3
    佐々木朗希の今季終了後の「メジャー挑戦」に現実味…海を渡る条件、ロッテ側のスタンスは

    佐々木朗希の今季終了後の「メジャー挑戦」に現実味…海を渡る条件、ロッテ側のスタンスは

  4. 4
    ドトールに注がれる「石丸効果」都知事選でヒモ付き隠さず3番手から猛追、株価も爆上がり

    ドトールに注がれる「石丸効果」都知事選でヒモ付き隠さず3番手から猛追、株価も爆上がり

  5. 5
    「あぶない刑事」100万人突破で分かった…舘ひろし&柴田恭兵“昭和のスター”の凄みと刑事役の人材不足

    「あぶない刑事」100万人突破で分かった…舘ひろし&柴田恭兵“昭和のスター”の凄みと刑事役の人材不足

  1. 6
    ソフトB山川穂高「無神経ぶり」改めて露呈…31試合ぶり本塁打も身内から異論噴出

    ソフトB山川穂高「無神経ぶり」改めて露呈…31試合ぶり本塁打も身内から異論噴出

  2. 7
    石丸伸二候補に大逆風…「恫喝」訴訟で2連敗、都知事選後の国政進出シナリオも狂いが

    石丸伸二候補に大逆風…「恫喝」訴訟で2連敗、都知事選後の国政進出シナリオも狂いが

  3. 8
    蓮舫候補に一発逆転の「神風」は吹くのか…7.7都知事選「一歩リード」の小池知事を猛追

    蓮舫候補に一発逆転の「神風」は吹くのか…7.7都知事選「一歩リード」の小池知事を猛追

  4. 9
    都知事選最終盤に飛び交う「蓮舫狙い撃ち」の怪情報…永田町に出回る“石丸2位”データの真の狙い

    都知事選最終盤に飛び交う「蓮舫狙い撃ち」の怪情報…永田町に出回る“石丸2位”データの真の狙い

  5. 10
    猛チャージ石丸伸二候補に広がる危機感…広島からは「あんなぁ都知事に押し上げちゃいけん」

    猛チャージ石丸伸二候補に広がる危機感…広島からは「あんなぁ都知事に押し上げちゃいけん」