陽子線でがんを狙い撃つ(1)従来の放射線の効果を上回る
体への負担が小さく、効果が高いがん治療として世界で注目を集めているのが陽子線治療だ。
2016年に小児腫瘍(限局性の固形悪性腫瘍)が初めて保険適用になり、2018年、22年、そして今年の診療報酬改定で、新たに保険適用のがんが追加された(囲み参照)。
そんな中、3月1日に国内20施設目となる陽子線センターが診療を開始した。岐阜県の中部国際医療センターだ。施設長を務める不破信和医師は、20年近い陽子線の治療経験を持つ。
陽子線治療は、がんの三大治療(手術・薬物・放射線)のうち、放射線治療に含まれる。
「放射線治療は1895年にX線が発見されたのが始まりで、翌年には治療が開始されています。しかし当初は体の表面のがんにしか対応できませんでした。放射線の進歩はまず、いかに深部に放射線を集めるか。次に、いかにがんのみに放射線を集中させるか」(不破医師=以下同)
最新の放射線治療であるIMRT(強度変調放射線治療)では、いびつながんの形に合わせて照射範囲や強度をコンピューター制御で常に変化させ、がんに集中してX線を当てられるようになっている。