鈴木エイト氏が語る旧統一教会と政治家の“ズレ”…本質は「社会の見方が変わっただけ」

公開日: 更新日:

勝共連合会長に見るゴマカシ体質

 ──元首相に依頼し、了承を得たのは梶栗氏だったという裏話。映像と関連記事を文芸春秋デジタルで公開していますね。

 教団のオフィシャル映像を入手して配信したんですが、よほど具合が悪かったのか突然、著作権を主張し始めた。NHK「クローズアップ現代」(8月29日放送)のインタビューで梶栗氏は自分が内諾を得て、上部組織のUPFや関連媒体のワシントン・タイムズを通じて正式依頼したと釈明していましたが。教団との直接的な関わりを隠し、発言と矛盾しないように糊塗したんでしょう。

 ──子供だましです。

 2世信者による正体隠しの街頭勧誘を報じて、統一教会から訴訟を起こされたこともありました。教団側が「家庭連合を名乗り、伝道活動だと明かしていた」と主張したので、未公表の撮影映像と文字起こしを法廷に提出して反論した。すると、「長髪の変な中年男がいきなり割って入ってきたら、本当のことを言うわけがない」とか言うんです。都合が悪くなるとコロコロ変わる。二枚舌、三枚舌の組織なんです。

■カルトの滑稽さを取っ掛かりに

 ──俗な反論ですね。

 安保法制に反対する「SEALDs」に対抗し、教団側は大学生の2世信者を中心に「国際勝共連合大学生遊説隊UNITE」を結成。改憲賛成の遊説をしていたんですが、実際には教団側が2世信者に行わせていたにもかかわらず大学生の自主的な活動だと称していました。これには政権の意向や指示があったとみています。実態を暴こうと取材を重ねる中で入手した内部メールには「エイトが来るかもしれない、、、、とのことですので、対策関連の内容です」「UNITEと勝共連合についての関係です。外的には二つの看板を背負っての活動です」などと書いてあった。なぜ2枚の看板が必要なのかという観点から安倍政権との関わりを記事にしたら、UNITEは晴れて勝共連合の傘下団体になった。そうやって取り繕うんです。

 ──身の危険を感じたのは一度二度ではないとか。

 殴られたこともありますが、それほど怖い思いはしてないですけどね。02年に偽装勧誘の実態を報じるテレビ番組を見て、統一教会を追い始めた頃は尾行されましたが、真後ろをつけるので気づきましたし。交番を通り過ぎたあたりで振り返ると、あっちも立ち止まる。取っ捕まえて交番に突き出したら、「統一教会本部から言われてつけました」と白状するんですよ。

 ──一人一人の信者は真面目とは聞きますが……。

 そうなんです。指示を実直に遂行している。だから、こっちもレジャーとしてやっている部分もある。最近はむしろ、政治家絡みの方がおっかない。教団と関わりが深い自民党議員の街頭演説の取材中にマイクを外した議員から「〇〇さん、早く××の家に帰った方がいいよ」と、僕の本名と自宅がある地域を言われたことがありました。自宅周辺を撮影していたり、大きな荷物を抱えて座り込む不審者がいることがあるので、地元の警察署に重点パトロールしてもらっています。鈴木エイトは誰も見向きもしなかったネタをストイックに追い続けてきた孤高のジャーナリスト──みたいな扱いをされるんですが、楽しんでもいるんです。カルト問題には滑稽な部分がある。おどろおどろしい面を強調すると一般の人は取っつきにくいので、ユーモアを交えて伝えているつもりです。カルトを笑い飛ばすことは脱会者のリハビリにもなる。フラッシュバックに苦しむほど恐ろしかった団体は、笑いの対象になるチンケな集団だと見直せる。それで楽になれることもあるんです。

*インタビューは【動画】でもご覧いただけます。

▽鈴木エイト(すずき・えいと)1968年、滋賀県生まれ。日大卒。ニュースサイト「やや日刊カルト新聞」の副代表、主筆を歴任。著書「自民党の統一教会汚染 追跡3000日」(小学館)を今月26日に発売予定。

■関連キーワード

最新のライフ記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…