日本人の賃金を上げるために「労働組合」をつくる! 実は従業員と会社の双方にメリット
組織率の高い国は賃金も高くなる傾向
この組織率の低さが日本の低賃金と結びついている可能性もある。海外の労働組合組織率を見てみると、賃金の高低と関係がありそうなのだ。
先日、内閣府が2022年の1人当たりGDPが3万4064ドル(円ベースで448万円=1ドル約131円換算)となり、ドル換算でG7(先進7カ国)の最下位に沈んだことを発表した。OECD(経済協力開発機構)加盟38カ国中でも21位に低迷。
このニュースを受け、病院勤務の看護師さんがSNSに「物価や税金は上がるのに、給料が全くあがらなくて困っています。1年で1500円しか給料が上がらない国が経済成長できるとは思えない」とコメントしていた。まったくもってその通りだ。
一方、1人当たりGDPの1位はルクセンブルクの12万4592ドル(約1640万円)、2位がノルウェーの10万6180ドル(約1400万円)、3位がアイルランドの10万4237ドル(約1370万円)。他の主だった国は、5位の米国が7万6291ドル(約1000万円)、16位のドイツが4万8718ドル(約640万円)だ。
それらの国の組合組織率はOECDの公表資料(2011年)によると、ルクセンブルク36.5%、ノルウェー53.3%、アイルランド31.6%となっている。米国は11.9%と日本より低いが、ニューヨーク州やワシントン州といった平均賃金が高い州ほど20%前後の組織率を誇っている。
■「組合をつくりました」と名乗るだけ
では、どうしたら労働組合はつくれるのか?
「簡単ですよ。個人ユニオンもありますが、ある程度の仲間ができたら『私たちは組合をつくりました』と名乗るだけ。組合費を徴収する場合は口座を開設し、規約をつくります。会社と交渉する際は『Aさんはユニオンに加入しました。今後はユニオンに交渉権が委任されました』とメールか文書で通告するだけ。使用者は『雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと』(労働組合法第7条)はできません」(稲毛氏)
もし会社が団交を拒否したら「不当労働行為」として罰せられるのだ。
「サマンサタバサの従業員もそうでしょうが、賃金が上がらないと、従業員は『生活が苦しい』と会社に訴えがち。会社は『ああ、そうなんだ。会社も苦しいので』と言っておしまいです。会社と労働条件を交渉する際は、『自分(従業員)はこれだけの実績を上げた』と成果を強調することが大事です」(稲毛氏)
業績不振を理由にした一方的な減給は、原則認められない(労働契約法第8条)。会社が倒産しそうな場合でも同様で、労働者の合意がなければ減給できないのだ(労働組合がある会社では「労働協約」の変更によって減給を行うことは可)。
別に会社とケンカするわけではない。モノ申すだけで1万円でも2万円でも給料が上がるのなら、いっちょ組合でもつくろうかな……という気になってくる。