ワンちゃんの繁殖は適正に行いたい…それでも交配してしまったら堕胎薬は“奥の手”
ワンちゃんを複数飼っている方は、珍しくありません。同年代くらいのオスとメスを飼い始めて去勢手術や避妊手術をしていないと、自然の流れで交配が成立するリスクがあります。発情したメスが卵巣から分泌するプロゲステロンがオスを誘うためです。
妊娠の成立と維持にはこのホルモンが不可欠ですが、その働きを阻害する薬「アリジン」が最近、発売されました。人工流産を促す薬で、効能は堕胎薬です。使用は、交配後45日以内に限られていて、交配日の確認はとても重要です。また、使用後はホルモンバランスが崩れるため、副作用の説明も欠かせません。
動物愛護管理法では、「終生飼育、適正飼育」が飼い主の義務。かかりつけの獣医師は、むやみに繁殖させないように飼い主を指導する立場にあります。
こうした時代の背景から、去勢や避妊を勧める獣医師は増えましたが、繁殖についての経験豊富な獣医師は若い世代を中心に減少傾向にあるのも事実です。当院でも、難産が予想される際に行う帝王切開は10年も実施していませんし、助産の手伝いはほとんどしていません。「犬の面倒は一生見ます」という飼い主との約束がなければ、法律との兼ね合いで手伝えないためです。助産をトータルで請け負う動物病院は少ないでしょう。