クルド人が集住する埼玉県蕨市を訪ねてわかった…SNSで過熱するヘイトと現実のギャップ
「ネット住民は現地には来ない」
3月中旬にはこんなことがあったという。
「ネウロズというクルドの春のお祭りがあったのですが、会場でトラブルが起こることを恐れて、公園を管理する自治体が開催に難色を示しました。交渉の末、なんとか開催できたのですが、外国人排斥を訴える団体が大勢会場に来るんじゃないかと心配でした。その時は私たちも反論しなければと心の準備をしていたのですが、実際に来た外国人排斥団体は3人程度と聞き、大きなトラブルにならずホッとしました」(Aさん)
今月14日には、蕨駅前でクルド人排斥を訴える団体のデモがあった。「暴走危険クルドカーの恐怖」「根絶せよ!クルド犯罪と偽装難民」と書かれたプラカードを掲げ、「不法滞在のクルド人は国に帰れ!」とスピーカーで叫んでいた。
とはいえ、デモの参加者は10人程度。デモに異を唱えるカウンター行動の人数の方がはるかに多く、100人近くが集まった。
在日クルド人をめぐる議論は、ネット上で過熱している側面が否めない。ある中学生のクルド人の女の子はこう話す。
「問題を起こす人がいるのも確かですが、普通に暮らしているクルド人もたくさんいます。それなのに、一部のクルド人が起こした問題を何度も拡散され、中には誤った情報もあります。ネットの人たちは、ネットで有名な人の言うことをそのまま信じるだけ。自分たちが蕨に足を運ぶこともなければ、私たちと直接話して、私たちのことを知ろうともしないのはなぜなのですか」
ネットにある情報はごく一部。実際にその場所に行ってみなければ、わからないことだらけだ。現地に足を運ぶことで、相互理解の糸口を見つけることもあるはずだ。
(取材・文=橋本悠太/日刊ゲンダイ)