イワシ大量水揚げのはずが一転、鹿島港沖で漁船沈没の悲劇…予測不可能な転覆原因
転覆した漁船は「網船」という網を巻き上げる役割を担い、魚を探す「探索船」とロープでつながれ、バランスを取りながらそれぞれ数百メートルの範囲にいた。
操業開始から約2時間後、網船が大量のイワシを引き揚げたところ、船体が右に傾き始め、船員たちは次々と冬の冷たい海に投げ出された。
「当時、大浜丸を含め24船団が同じ漁場で操業していました。入網状況から考えると、魚の量は300トンかそれ以上あったのではないか。普段なら2、3回かけて船に積める量の魚をとりますが、この日は1回の操業で十分な量がとれたため、『水揚げに戻ります』と漁を終える船が多かった」(旋網漁協関係者)
■魚群の群れが変化したのか
それだけの重さの魚を引き揚げるとなると、船が傾くことは予想できたはず。ではなぜ網船は転覆したのか。
「それを踏まえた上で魚群探知機やソナーで魚群を追いかけ、とれる魚の量を予測して網を巻きます。一網打尽にするのではなく、水揚げできる範囲内で巻く。ただ魚は動きますから予想より多かったり、少ないこともあります。多い場合には網を絞って漁獲量を調整したり、あるいは網が破れて魚が逃げ出します。本当に危険なら自ら網を切ることもある。何かのきっかけで網の中の魚群の向きや動きが変わり、網に余計な力がかかることも考えられます。実際、転覆までいかなくても網の中の魚が急に動いて船が傾き、ヒヤッとすることもあります。乗組員も魚がたくさん網にかかっていることはわかっていたはずですから、何らかの要因があったのでしょう」(前出の関係者)