福島県双葉町の「光と影」(下)東日本大震災から14年…病院も学校も介護施設もない
小泉進次郎元環境相に“バカでねえか”
先祖代々、町で暮らしてきた高倉伊助さん(69)は、小泉進次郎衆院議員が環境大臣に就任した直後の19年、町民との間で行われた会議の様子を思い出し、こう憤る。
「当時、大臣らと町民15人くらいで話し合う会議があった。オレは出なかったけど出席した人らによると、進次郎さんは30年後の話ばっかしたそうだ。それを聞いてオレは『バカでねぇかっ』つったんだ。会議さ出席した15人のうち、30年後に何人生きてるんだ。皆が知りたいのは、明日、1週間後、1カ月後の生活の話だべ。どだい、ゴールがねぇことは分かってる。“ウソ”でもいいから具体的な計画を示して欲しい。でないと、皆、心が折れちまう。なのに行政は、学校も病院も買い物すっとこも整備せず、無計画に『避難指示を解除する』って、おかしくねぇか。『解除した』という実績が欲しいだけでねぇのか。国も県も、その場しのぎのキレイごとを言っちゃると一緒だべ」
舌鋒鋭い高倉さんだったが、言葉の端々に地元への愛がにじみ出ている。出張でコンビニ飯を買おうと思っていた記者に「ウチで晩飯を食っていけ」と、ごちそうまでしてくれた。街灯が少ない町の夜には漆黒の闇が広がっていたが、人の温かさに一筋の光明が見えた。
(小幡元太/日刊ゲンダイ)