ランスタッド株式会社 ポール・デュプイCEO(1)ワーキングホリデーを利用して大阪・西成で過ごす
当時、多くのカナダ人は日本についてほとんど知識がなかったという。ネットもない時代だ。ポールは図書館に通っては調べ、日本には東京、北海道、沖縄、大阪があることを知る。
「道頓堀の写真とともに『大阪人はしゃべるのが好き、食べるのが好き、笑うのが好き、モノをはっきり言う、スポーツが大好き』と書かれているのを読んで、大阪に興味を持ちました。大学を卒業後、ワーキングホリデーを利用して、所持金2万7000円で日本に行った。でも言葉もわからない。安く泊まれる場所を探していたら、たどり着いたのが西成でした。ちょうど1990年の西成暴動があった時です」
当初、日本滞在は半年の予定だったが、公立高校の英語教師の職を得ることができ、剛柔流の空手の道場にも通いながら、5年ほど滞在した。
■1995年の阪神・淡路大震災で人生観が一変
ポールの人生観を一変させたのが1995年の阪神・淡路大震災だった。
「ウインザーのロースクールに入学することが決まっていたので、そろそろカナダに戻ろうと思っていました。阪神・淡路大震災に被災し、多くの人が亡くなったのを目の当たりにして、大きな衝撃を受けました。空手仲間と西宮でボランティアをやりながら、人生について考えた。それまでは安定した収入が得られるので弁護士になりたいと思っていたのですが、社会に貢献する仕事をしたいと思うようになった」