著者のコラム一覧
有森隆経済ジャーナリスト

早稲田大学文学部卒。30年間全国紙で経済記者を務めた。経済・産業界での豊富な人脈を生かし、経済事件などをテーマに精力的な取材・執筆活動を続けている。著書は「企業舎弟闇の抗争」(講談社+α文庫)、「ネットバブル」「日本企業モラルハザード史」(以上、文春新書)、「住友銀行暗黒史」「日産独裁経営と権力抗争の末路」(以上、さくら舎)、「プロ経営者の時代」(千倉書房)など多数。

エルピーダメモリ(下)計画倒産の疑惑が消えないまま坂本幸雄元社長は表舞台から退場した

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 DIP型では破綻した企業の社長が管財人になるという一人二役が可能になった。管財人は支援企業の選定に大きな影響力を持つ。スポンサー選びも意のままとなる。

 DIP型会社更生手続きは経営再建のスピードを上げるために導入された。これを導入した司法の官僚は、経営者が保身のために悪用するなどとは、露ほども思わなかったはずだ。

 坂本は株式市場を欺いたといわれている。12年2月23日、「3月28日に臨時株主総会を開催し、日本政策投資銀行の優先株の償還に備えるための減資などの議案を付議する」と発表した。株式市場は資金不足を回避し、会社を存続させる意思表示と受け止め安堵した。

 ところが取引所の営業日で数えて2日後の2月27日に会社更生法を申請した。市場はパニックに見舞われ、翌28日には、朝から売りが殺到し、売買が成立せずストップ安状態で終わった。29日の前場(午前中)に5円でやっと売買が成立した。3月28日に上場廃止となり、株券はただの紙くずとなった。

 銀行団もだまされた口だ。2月23日、銀行団に返済期限の近づいた融資の3カ月間の繰り延べを求めるなど、自力での事業継続への意欲を見せた。それなのに翌24日には、主要4行の口座から預金、250億円が引き出され、取引がなかった、りそな銀行に移し替えられた。融資と預金が相殺されないようにするための措置だ。資金を確保した上で、正式な通告すらないまま、27日に更生法の申請に踏み切った。銀行は「『寝耳に水』。金融機関との信頼の糸は完全に途切れた」と断じた。

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