エルピーダメモリ(下)計画倒産の疑惑が消えないまま坂本幸雄元社長は表舞台から退場した
坂本幸雄はモーレツ経営者だったが、経営力、特に先見性については疑問符をつける向きが多かった。
「パソコン用DRAMは価格が急落したが、スマートフォン用は十分収益を上げていた。それなのにエルピーダは旧来のパソコン用の生産ラインのまま。スマートフォン時代に取り残された。トップの戦略ミスが倒産の最大の原因だ」(業界関係者)
取引銀行は「実効ある再建計画を打ち出せなかった」と不信を口にした。
米マイクロンによる買収は、最初から不可解なことばかりだった。倒産させた張本人がエルピーダの管財人となり売却先を決めたため“出来レース”の疑惑がつきまとった。
いくつかのヘッジファンドなど社債債権者20社は「エルピーダの企業価値は、管財人(=坂本)が査定した2000億円ではなく、3000億円に上る」と主張。「マイクロンへの売却提案は透明性を欠いている」として、独自の再建案を東京地裁に提出した。
2009年から導入されたDIP型と呼ばれる新しい会社更生手続きが、坂本の“出来レース”を可能にした。DIPは「占有継続債務者」と訳されている。破綻企業の経営陣が退陣せず、更生計画に関与するのが最大の特徴。