会社の窓口には相談しにくくて…ハラスメント相談代行のメリットと「3つの事例」
企業は「ハラハラ」にも苦慮する時代
【事例2】昭和世代のハラスメントを引きずる悪しき慣習
中小企業の商社マンだったBさん(60)は、58歳の時に役職定年となり、部長という管理職から平社員に。65歳まで勤め上げるつもりだったが、事件が起こる。同じ部署の23歳の新入社員が日本公益通報サービスに通報をしてきたのだ。
「Bさんから圧がかかる態度を受けています。『なんでこんなことができないんだ!』などの言い方なので、つい黙ってしまうと『なんで聞かないんだ。聞かないおまえが悪いから仕事がストップしてしまった』と責任転嫁をしてくるんです」
新入社員はBさんから圧のある態度を改善してもらうか、Bさんの異動を要求した。本人の異動希望でないのは、「部署の他の人はよい人ばかりなので、自分は残りたい」からだという。
相談員が企業のコンプライアンス担当に通報すると企業側はBさんに注意勧告の指導を行ったという。ところが、しばらくして再発したためBさんは異動になり、周囲から監視されることに。会社側がハラスメント研修を怠ったことも、原因のひとつと分かった。
このケースは「昭和世代の悪しき慣習から起こったハラスメント」と前出の三谷氏が指摘する。
「昭和世代が昔の価値観をそのまま持っていることが根本の原因です。昭和世代は残業や休日に業務連絡も当たり前という感覚がありますが、令和にはそれが通用しません。若い世代はハラスメント問題に敏感になっていることすら、知らないのです」
ハラスメント問題といえば、中古車販売業者のビッグモーター社を思い出す人も多いだろう。ビッグモーター社のように時代錯誤的な企業風土が残存する企業が少なくないと指摘する。
「『おまえはクビだ』とか、『おまえは能力がないからトイレ掃除しかやらせない』などの上から目線の言い方で業務を取り上げて退職に持ち込んでいくことがハラスメントという認識がない。だから問題が生じるのです」(三谷氏)
ハラスメント問題を引き起こす人は、「忍耐」や「厳しさ」の中でこそ人は成長するという考え方が底辺にあり、そのためスパルタ的な教育や指導が効くと捉える傾向にある。
「加害者は先輩らと同じ言動を繰り返していた可能性があります。ハラスメント教育を怠った会社にも責任がありますね」(三谷氏)
【事例3】ハラスメント・ハラスメント(ハラハラ)は弁護士が介入することも
業務をスムーズに行うために上司が注意するなどの正当な行為を「ハラスメント」と指摘し、自分の権利を“過剰”に主張する行動を「ハラスメント・ハラスメント」(ハラハラ)という。本人にその自覚がない場合は、弁護士にフィードバックすることもある。
この事案にあたった相談員のCさんは次のように経緯を説明する。
「通報があったのは今年の2月。警備会社に勤務する50代の男性でした。勤務した企業からパワハラを受けて休んでいるということでした。企業側が調査をしたところ、パワハラが認められたので男性に対して謝罪したそうです。ところが、この男性は『パワハラで休んだ分を補償しろ』と要求してきました」
謝罪という適切な対応を取ったにもかかわらず、休んだ分の給与の補償という要求に企業側は困り、新しい勤務先を男性に紹介したが、「補償してくれないなら働かない」などわがままな言い分をしたため、企業側がさじを投げ弁護士にこの件を依頼したという。
「企業にとっても苦慮するハラハラ。防止策はハラスメントの基準を明確にするなど、社員の教育が重要です」(三谷氏)
◇ ◇ ◇
日本公益通報サービスでは、パワハラ・セクハラといった各種ハラスメントのほか、雇用関係、不正会計や汚職、セキュリティー違反といった内部通報の相談も行っている。