「訪問介護」中小の倒産が過去最悪…スタッフ高齢化、大手参入、コスト高が“三重苦”に
「介護職員を含めた人手不足の長期化とともに職員の高齢化、介護事業の将来性を見込んだ大手企業の参入で採用や市場獲得競争が激化し、中小事業者に厳しい状況になっていること、そしてコスト高の影響です」
介護報酬は公定価格で決められている。他の民間企業のようにコスト上昇分を価格転嫁できないことも経営に影響しているといえる。
今年1月22日に発表された24年度の介護事業の基本報酬(3年ごとに改定)は、全体的には1%から4%程度引き上げられた。ところが訪問介護は2%の引き下げとなっている。訪問介護の収支差率(売り上げに対する利益率)は+7.8%と、他のサービス(平均+2.4%)に比べプラス幅が大きく、経営状況は良好と判断した結果だ。
訪問介護事業は大手と小・零細事業所では経営状況は大きく異なる。利用者宅を1軒ずつ訪問する事業者と、集合住宅に共同で住む利用者への訪問を得意とする大手事業者とでは利益に大きな差が出る。赤字経営の小・零細事業者に倒産が集中する一方、大手事業者の利益は突出している。その結果、訪問介護は経営状況が良好と、今回の訪問介護全体での引き下げとなった。訪問介護の現場と乖離した設定といえる。