市場の透明性を高めるチャンスなのに…海外投資を規制できない日本の事情
しかし、日本の置かれている状況は独特だ。23年の日本人の人口は約85万人も減った。もちろん過去最大だ。同時に全国で空き家は増える一方だ。急速に市場が縮小しつつある中で外国からの投資を過度に制限すると、出口を失った不動産が大暴落する可能性すらある。
ある経済アナリストは「バブル期は地価高騰に対する不満が社会問題化し、世論に押された大蔵省(当時)が不動産融資への総量規制を通達。これがバブル崩壊につながった苦い記憶もあり、強い規制への慎重論は根強い」と語る。
それとは別に外国人の不動産購入を制限するのは簡単ではない。日本にはEU諸国で採用されているような、法人の実質的所有者を明らかにする制度が存在しないからだ。現在の制度では、外国人オーナーがSPC(特別目的会社)などの法人を設立して不動産を購入すれば、登記簿からも真の所有者を把握することはできない。国際社会からは「日本はマネーロンダリング大国」との批判もあるほどだ。
不動産データを扱うトーラスの木村幹夫社長は「外国人からの投資を一律に規制する鎖国的な政策よりも、まずは不動産や法人オーナーの透明性を高める制度設計が必要だ。実質的所有者情報の登録義務化、税務・登記・金融情報の連携強化など手を付けるべきはたくさんある」。
外国人の不動産購入を「敵か、味方か」の二項対立で考えるのではなく、市場の透明性を高める契機にする。そうした冷静な議論こそが本当のバブルの教訓なのかもしれない。
(ニュースライター・小野悠史)