新関脇・逸ノ城 正々堂々の“変化封印”発言に透ける別の意図
「大男、総身に知恵が回りかね」という言葉がある。愚鈍でずうたいばかり大きいさまをあざけったものだが、192センチ、200キロの逸ノ城(21)は「知恵」こそ最大の武器という。
新入幕の九月場所で横綱白鵬と優勝争いを繰り広げ、13勝2敗の快進撃。関脇に昇進し、まだ大銀杏を結うには足りないものの、マゲ姿も披露した。
その逸ノ城が27日の記者会見で、「いつもと同じようにぶつかって、変化などはしないで当たっていきたい」と九州場所での抱負を述べた。9月場所では大関稀勢の里、横綱鶴竜に立ち合いの変化で土をつけた。しかし、上位力士にそう何度も変化は通用しない。読まれたら自分が不利になるもろ刃の剣でもあるだけに、変化の多用が厳禁なのは事実だ。
しかし、この発言を額面通り受け取る力士は少ない。ある角界OBは「勝つためなら、何をするかわからないのが逸ノ城」とこう言う。
「9月場所でも、鶴竜を破った立ち合い変化の前に自分からつっかけた。つっかけた力士は繰り返しになるのを嫌い、立ち合いは受け身になることが多い。鶴竜にそう思わせておいて、見事ワナにはめた。逸ノ城はそうした頭脳戦もお手のもの。稽古では愚直な突き押しが多く、申し合いで負けることも珍しくない。それだけに、9月場所で見せた身軽さと相撲のうまさには驚かされた。稽古と本場所ではまったく違う相撲を取るのです。負けた力士の多くは、体格任せの突き押し相撲しか取れないと思っていたはずです」