4年でラグビー日本一に ヤマハ清宮監督が説く「言葉の魔術」
2019年自国開催W杯への想い
――就任早々にレスリングコーチ、今年からボディービルダーが専属コーチに就任しました。
「ライバルが持っていない武器を持つのは大事なこと。ヤマハオリジナルですね。スクラムの組み方、タックルの動作なども、一年通してレスリングをやってきたチームなんてありません。自分たちの色、カラーをしっかり出せるようにするために、他競技からヒントを得るということで始めました。レスリングのように立っている状態から低くタックルにいって、すぐに立ち上がる。自分たちの形をつくる手助けになりました。自分たちはどこよりも多くタックルをしているという自信。メンタル的にも凄いプラスになります。ヤマハの選手はグラウンドに倒れていてはダメなんだと。レスリングはマットの上に倒れていたら負けですから。積み重ねてきた成果はあったと思います」
――早大、サントリーの監督時代は、戦力的に恵まれていた?
「そんなことはなくて、サントリーも豊富ではありませんでした。ボクが就任した年は新入社員が9人かな。出戻りのボクを含めて10人ですが、新旧のバランスは凄く大事。古い伝統というパターンを持っている選手たちと、新しいエネルギーを持っている選手たちが融合する。今回(優勝)のヤマハのメンバーも23人中、11人は古い選手。ボクの就任以前からいろんなことを経験している選手とちょうど半々なんですよ」
――ラグビー界全体に目を向ければ、9月半ばから4年に1度のW杯、イングランド大会があります。19年のW杯日本開催を見据え、清宮さんが「次期代表監督に立候補」と大々的な報道もありました。
「立候補なんてしていません(苦笑い)。イングランド大会で、日本代表にはしっかりとした結果を残して欲しいと思っています。結果が出れば、次の日本開催も同じ監督でチャレンジを加速すべきだと思います。ただ、もしうまくいかなかった場合は、やっぱり方向は変えないといけないでしょう。その時にもし、そういうお話(代表監督就任要請)を頂いたら、日本のW杯で日本人のために日本人で戦いたいという思いはあります」
■日本人選手で魅せなければ
――日本の世界ランキングは11位。自国開催の19年に向け、かつてのようなラグビー人気を復活させるためには何が必要ですか?
「大事なのは日本人でもできると表明することです。例えば、今回のイングランドでベスト8に入って、そのニュースが日本に届くかといえば届きません。日本開催でベスト8に入ったら、それは届きますよ。日本人でもできるんだと。例えば、陸上やバスケットボールをやってる選手たち、みんながオレもラグビーができるんじゃないかと。陸上で100メートル10秒台だけど、10秒5じゃ決勝には残れないという選手がいると思います。以前、能代工のバスケ部出身で身長が2メートル以上あって日本代表にも選ばれた選手が、ラグビーに転向したことがありました。そういうことが起こるかもしれません。ラグビーは体を張って守って戦略的で格闘技であるという、日本人の好きな要素がたくさん詰まっています。このスポーツをもう一回広めて競技人口を増やすためには、“やっぱり外国人じゃなきゃダメなんだ”ではなく、日本のW杯で日本人選手が魅せなければならないんです」
▽きよみや・かつゆき=1967年、大阪府生まれ。早稲田大学では2年時に日本選手権優勝、4年時には主将で大学選手権優勝。卒業後はサントリーに入社。2001年に引退し、早大ラグビー部の監督に就任、5年間で3度の大学選手権優勝を果たす。06年、サントリーラグビー部の初のプロ監督として就任。07年度にマイクロソフトカップ優勝。10年にサントリー監督を辞任し、11年2月、ヤマハ発動機ジュビロの監督に就任。