高校サッカー「50m超ロング弾」は四半世紀前にもあった
最初はピンとこなかった。コマツアキラ? あの50メートル超ロングシュートを決めた選手なのか?
3日の高校選手権3回戦・明徳義塾(高知)―各務原(岐阜)戦を取材した。目の前に「81年1月の西目農(現西目=秋田)―北陽(大阪)戦でセンターサークルからシュートを決めた西目農FW小松晃」がいる。明徳義塾サッカー部監督として各務原を破り、同高初の8強入りを決めた。
写真を撮りながら、四半世紀前の圧巻ゴールシーンを思い出した。
試合を北陽応援席の近くで見た。徹底マークされた小松は、倒されるたびに北陽の選手にクレームをつけ、北陽応援席からヤジられた。ロングシュートを決めると北陽応援席はヒートアップ。小松がボールを持つたびに「このボケ! 調子に乗るンやないでぇ~!」と口汚く罵った。耳馴染みのない関西弁に肩をくすめた瞬間、度肝を抜かれてしまった。小松が北陽応援席に向かって指を突き立てながら、怒鳴り返しているではないか。
試合終了まで北陽応援席と小松の丁々発止は続いた。ストライカーに求められる資質のひとつに「負けん気」があるとするならば、18歳の小松には十分に備わっていた。
明徳義塾は5日の準々決勝で前回覇者・星稜(石川)を相手に0-3と完封負けを喫したが、会場は駒沢競技場。北陽戦と同じスタジアムだった。
(文=六川則夫/サッカーフォトグラファー)